米津玄師『アイネクライネ』メロディーの美しさとアレンジの課題

今回は米津玄師の『アイネクライネ』のレビューを行います。

蔦谷好位置さんが編曲プロデュース担当しているということで楽しみな1曲です。
蔦谷さんは数々のアーティストを手がけていて、非常に優秀な音楽家です。
米津玄師さんの才能とどう融合するのかがポイントですね。

それではさっそくレビューしていきましょう。

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米津玄師『アイネクライネ』

作詞・作曲:米津玄師 編曲: 蔦谷好位置

イントロはなく、Aメロから曲が始まります。
彼の代表曲である『Lemon』と同様に
イントロはありませんが、
代わりにブレスの音を入れています。これは必要な音です。

メロディーは切ない雰囲気が漂っていていいですね。ボーカルの歌声とも非常に合っています。
伴奏はギターだけですが、このギターの
フレーズと音色がこの曲の世界観に合っていて非常に綺麗です。

途中から入ってくるシンセ・パッドがまた美しい音色ですね。
音色の選択が素晴らしいです。見事に曲を彩っています。

Aメロを折り返し、繰り返します。ここからリズム隊が加わります。
ハイハットとキックはいいと思いますが、スネアの音がいまいちですね。もっと良い音が合ったはずです。

(1:50)
2回目のAメロが始まりますが、1回目のAとほぼ同じでしょうか。
特に変化は無いようですね。スネアは変わって良い音になっている気がします。

(0:51)
Bメロはメロディーのクオリティが高いだけでなく、
Aメロとの違いを
リズムによって出しているのがいいです。
Bメロのメロディーは16分音符が中心になっていて、
これがAメロとの「差」になります。単純さを薄めることが出来るのです。

歪み系のギターの刻みのフレーズも良い味を出していますね。淡々と刻むのがクールでいいのでしょう。

「もう1つくらい楽器が加わるといいなぁ……。」と思っていたら、
ちょうどそのタイミングで
シンセサイザーのサイン波のフレーズが出てきました。
さすがですね。
ポルタメントが適度にかかっていて、非常に綺麗なフレーズになっています。

「どうして」の繰り返しで気持ちを高ぶり、そこからより歪んだエレキギターが現れます。
この歪み系のギターのフレーズにより、サビへの期待感が高まるのです。非常に上手なアレンジですね。

サビに入る前にブレイクが使われていますね。
ブレイクに関してはこの曲の最大の課題なので後で詳細を書きます。

(1:18)
サビのメロディーは美しいですね。
アレンジもメロディーを上手く彩り盛り上げています。
後半のほうではセカンダリードミナントを使って、切ない感じが出ています。
(E7 – Amという進行)

スネアの音がよくなっています。サビの盛り上がり方を考えればこの音は正解です。
全体的によく出来ていて悪いところは今のところありません。

しかし、やはりブレイクがサビ後に入ります。
そして、サビ後の短いフレーズを終えてAメロに戻る際もブレイクが入ります。

『Lemon』のときも同じ指摘をしたのですが、
ブレイクという技法は1曲の中で
何度も使用するものではありません。
流れが途絶えてしまいますし、意外性がなくなります。

要所に入れるからこそリスナーを「ハッ!」とさせられるのであり、
何度も使っては
その効果がなくなります。この後もブレイクが多用され少しうんざりします。

【楽曲分析】米津玄師『Lemon』をレビューする【フルPV】

(2:41)
2回目のサビですが、やはりサビに入る前にブレイクが使われています。
ブレイクを入れることで静かな空間が一瞬生まれるのですが、効果がありません。
なぜなら、リスナーがここでブレイクが使われることを予期できるからです。

2回目のサビの後にもブレイクが入ります。何が何でもブレイクを入れるつもりなんでしょうね。

(3:09)
間奏中にもブレイクが入っていますね。
間奏でのギターのフレーズは悪くないのですが、同じフレーズの繰り返しなので退屈ですね。
もっとしっかりフレーズを作りこんだほうがいいです。

(3:35)
ここからDメロに入ります。不思議なことにDメロに入る際にはブレイクがありません。
いったいどういう理由があるのか聞いてみたいですね。

Dメロのメロディーは優れています。世界観を壊すことなく、
それまでの流れを引き継ぎつつ盛り上げています。

アレンジも上手に盛り上げられています。
しかし、やはりDメロ終わりにブレイクが入り、その後再び間奏に入るのですが
「この後サビに入る直前にブレイクが入るんだろうな。」
と思っていたら、
案の定ブレイクが使われていました 😛

(4:12)
最後のサビは良いですね。前のサビとの違いは少ないですが、
非常に盛り上がっており、気持ちが高まります。
ドラムの手数が増えているので、その効果は出ていますね。

最後にブレイクをいれ、ボーカルの歌声だけを目立たせる形で終えています。
アウトロがないのは寂しいですね。

これも『Lemon』と同じでイントロもアウトロもないのは少し残念な気がしますね。
ずっと曲が盛り上がっていて、
世界観に浸っていたのに
ギターのハーモニクスで「ぷつっ」と切れてしまう感じです。

世界観が素晴らしいので余韻を味わいたいのですが、
アウトロがないのでそれが出来ません。それは少し残念です。

米津玄師『アイネクライネ』の総評

コード進行はシンプルでセカンダリードミナントを少し使う程度です。
メロディーは終始素晴らしくて、クオリティの高さがよく出ています。
カラオケで歌っていても気持ちがよいでしょうね。

課題は言うまでもなく『ブレイク』の使い方です。

音楽には正解や不正解が無いと言われていますが、このブレイクの多用は間違いです。
ブレイクを入れすぎてしまうと曲の流れが止まりすぎてしまうのです。
要所で使うからこそ意外性があって良いのですが、多用するとブレイクのメリットが消えてしまうのです。

メロディーがこれだけ美しいのですから、アレンジはもう少しがんばって欲しかったです。

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