DTMで作曲をするにはエフェクトの使い方を覚える必要があります。
エフェクトは音にお化粧をするイメージで考えてください。
空間系エフェクトはリバーブやディレイといった音を響かせたり輝かせる効果を与えることが出来るのです。
そこで今回は初心者の方向けに空間系エフェクトの
基礎知識を解説していきたいと思います。
ディレイを使った音源も用意してありますので参考にしてみてください。
主にCubaseで解説しますが、他のソフトでも似た機能がありますので
ぜひ、参考にしてみてください。
音を響かせる空間系エフェクトとは?
空間系エフェクトには主にリバーブとディレイがあります。
リバーブはお風呂場にたとえられることが多いです。
湯船につかりながら歌うと音が響きますよね。
あれがリバーブの効果だと思ってください。
なぜ、お風呂場では音があのように反響するかというと、
壁のタイルが平らで硬いためです。
周囲の壁が平らで硬い材質だと音が跳ね返りやすくなるということです。
逆にカーテンのような柔らかいもので囲まれていると、
音が跳ね返らず、響きも乏しくなるのです。
ディレイは山彦にたとえられます。
山頂で「ヤッホー」と叫べば、遅れて「ヤッホー」と聞こえますよね。
ディレイも同じように同じ音を繰り返し鳴らすエフェクトなのです。
何回繰り返すのか、繰り返す間隔はどのくらいにするのかなどを
ディレイの設定で決めていくのです。
ディレイの基礎知識を習得しよう
前述の通り、ディレイはやまびこのように音を繰り返し鳴らすエフェクトです。
ディレイには様々な効果を与えることができます。
例えば曲のテンポに合わせて4分音符遅れて鳴らすことも出来ますし、
最初の音が鳴ってからすぐにディレイ音を鳴らすこともできます。
これをショートディレイといいます。
ディレイ音を繰り返す回数も決められますし、ディレイ音の音質を調節することもできます。
Cubase9に付属のモノラルディレイで各メーターの解説をしていきます。
Delay(ディレイ)
音をどれだけ遅らせて出すかを決めるメーターです。
画像では8分の1になっているので最初の音が発音してから
8分音符1つ分遅れてディレイ音が鳴ります。
DAWソフトのBPMとリンクしているので、作曲の途中で
テンポを変えてもDelayタイムを設定しなおす必要はありません。
左下の『sync』の電源をONにしておく必要があります。
それとは逆に「○秒後に遅らせたい」というときには
左下の『sync』のスイッチをオフに切り替えて、数値を設定してください。
例えば、50msに設定すれば0.05秒後に音が遅れて出てくるということです。
※msはミリセカンドと読みます。
ショートディレイのときはこちらの方法を使用することが多いです。
このsyncというメーターはシンセサイザーでも使われているので必ず覚えましょう。
Feedback(フィードバック)
ディレイ音を何回繰り返すかを決めるメーターです。
Feedbackを3に設定したからといって3回繰り返すというわけではありません。
0に設定すると1回音が繰り返されます。
15前後で音を聴いてみて、試行錯誤を繰り返しながら数値を決めていくといいでしょう。
Filter(フィルター)
ディレイ音の音質を決めます。
最初に鳴らされた音とまったく同じ音を繰り返すのではなく、
ディレイ音の音質をわざと少し落としたいときに使います。
MIX(ミックス)
エフェクトのかけ方にはインサートとセンドの2種類があります。
空間系エフェクトはセンドエフェクトで使われることが多いです。
センドで使うときにはMIXを100に設定して、
各トラックにあるフェーダーで量を調節します。
なぜ100にするのかというと原音(元の音)にどのくらいエフェクト音をかけるかを
決めるので、50にしてしまうと「原音」に「原音50%+エフェクト50%」を
加えるということになってしまうのです。
あとは各トラックのフェーダーでどのくらい送るのかを設定します。
以下はボーカルトラックにディレイを使用した例です。
-15辺りに設定して聴きながら数値を設定しましょう。
かけ過ぎないように注意してください。
ショートディレイの設定方法
ディレイにはショートディレイというものがあって、
ほんの少しだけ遅らせて音に輪郭をつけることができます。
このときの設定は20ms~50msにします。
ボーカルをはじめ様々な楽器に使われます。
msという単位はミリセカンドといい、1msなら1000分の1秒になります。
「○秒後に遅らせたい」というときのためのディレイタイムの計算法を紹介します。
ディレイタイム=60÷テンポ(BPM)×A×1000
テンポが100(4分音符)で4分音符分遅らせたい時には計算式のAに1を入れます。
計算するとディレイタイムを600msにすればいいと分かります。
DTMではあまり使われないと思いますが、頭の片隅に入れておくといいでしょう。
【初心者の疑問】作曲と編曲のやり方を一から教えてください!!
お風呂場効果!!リバーブの基礎知識
あなたもお風呂に入っているときについ歌ってしまいますよね。
お風呂場は音が響きやすい場所なので、歌が上手に聴こえるのです。
カラオケでも同じですよね。
ほどよく響くように設定されているので歌うと心地よいのです。
カラオケではエコーと呼ばれているのでしょうか?
それと同様の効果を与えるエフェクトです。
※エコーというエフェクトは別にあります。
リバーブタイプの中にはルーム(Room)、ホール(Hall)、プレート(Plate)などがあります。
短いリバーブ音が欲しければルームを、長めのリバーブ音が欲しければ
ホールまたはプレートタイプを選ぶといいでしょう。
Cubaseに付属しているRoomWorks SEで解説します。
最低限の機能のみ搭載されているので初心者向けのソフトといえます。
Pre-Delay
ここでリバーブが開始するまでの時間を設定します。
数値を大きくすれば耳に届くまでの時間が長くなります。
Reverb Time
リバーブ音が鳴っている時間の長さを設定します。
これとリバーブタイプが最も大切なパラメーターといっていいでしょう。
Level
ディケイタイムの設定を行います。
例えばhiの数値を下げると高域の減衰を早めることが出来ます。
Mix
ドライとウェットの割合を設定します。
センドの場合は100にして、各トラックにあるスライダーで量を調節します。
DAMPING
上の画像にはありませんが音質を決めるメーターです。
ディレイと同様に残響音の音質をわざと少し落としたほうが
好みの音になることがあります。
Diffusion
Diffusionは拡散という意味で値を上げると拡散音が増えなめらかなサウンドになります。
逆に値を下げるとすっきりした音になります。
ソフトによってはもっと機能が豊富なものがあります。
音が反射する速度や角度などを調整できるソフトもありますが、
初心者はそこまで学ぶ必要はないでしょう。
ただし、リバーブというエフェクトは非常に使用頻度が高いので、
基本的な構造とメーターの意味と効果をしっかりと理解する必要があります。
何よりも大切なことは自分で実践することです。
理論だけを学んだだけで分かったつもりになってはいけません。
もし「各メーターの効果が分からない」とか「うまくエフェクトがかけられない」
という場合はプリセットを使っているのもいいでしょう。
プリセットでエフェクトの効果を耳で聴いて、各メーターの数値も確認しましょう。
数値をいじるとどのように音が変化するのかも試してみるといいでしょう。
空間系エフェクトの実践編
ここからはディレイの具体的な使い方を解説します。
ボーカルにディレイをかけたものを3種作りましたので聴いてみましょう。
・ショートディレイ
・ミディアムディレイ
・テンポディレイ
3種ともセンドでMIXを100にしてあります。
音源にはエフェクトがかかっていない素のボーカル音源から始まり
以下の3つのディレイを使った音源が入っています。
①ショートディレイ
ディレイタイムは20msでフィードバックを0に設定。
PANの位置を原音をR20、ディレイ音をL20にして少しずらしたほうがいいでしょう。
フェーダーは-7.06に設定してあります。
♫素のボーカル→ショートディレイ
②ミディアムディレイ
ディレイタイムは170~200msでフィードバック25%前後に設定。
フェーダーは-15.7に設定してあります。
♫素のボーカル→ミディアムディレイ
③テンポディレイ
ステレオディレイを使います。
Rから4分音符、Lから8分音符遅らせて音が出るように設定。
フィードバックは0に設定してありますが少し上げてもいいでしょう。
フェーダーは-18.0に設定してあります。
曲のテンポによって音符の長さを変えてもいいと思います。
このテンポディレイはギターやピアノなど様々な楽器で使われることがあります。
ただし、ベースやキックには普通使いません。
ディレイを使ったカッコいいフレーズを紹介
ここからはディレイを使ったフレーズを3つ紹介します。
・符点8分のディレイを使ったギターのアルペジオ
・タンバリンに付点8分音符ディレイを使う
・ドラムにショートディレイを使い輪郭を作る
符点8分のディレイを使ったギターのアルペジオ
ディレイで付点8分音符遅らせたギターのアルペジオフレーズの解説をします。
モノラルディレイを使い、ディレイタイムを1/8Dに設定します。
1/8Tだと3連、1/8Dだと付点8分になります。
もとのフレーズは8分音符のシンプルなアルペジオですが、
付点8分のディレイを使うと一気に輝きが増します!!
下の譜面を見てください。
カッコ内の音がディレイ音になっています。
タンバリンに付点8分音符ディレイを使う
付点8分音符のディレイはパーカッションのフレーズにも使われます。
ここではタンバリンを8分音符で鳴らしたフレーズにかけてみましょう。
ディレイ音をしっかりと作りこむことが大切です。
なぜならそのままだと16分音符で鳴らしたのと同じフレーズになってしまうからです。
ディレイ内のフィルターを使ってもいいですし、他のエフェクトをディレイ音にかけてもいいでしょう。
ディレイの設定は先ほどと同じです。
ブレイクを使ったときにディレイ音が邪魔をすることがありますので注意してください。
ブレイクとは一時的にほとんどまたは全てのパートが演奏を止め静かな空間を作ります。
そして、目立たせたいパートのみを演奏させるのです。編曲の基本テクニックの一つです。
オートメーションを使ってディレイの電源、またはフェーダーの量などを管理して
ディレイ音を鳴らせないようにするのです。
以下の記事で具体的なやり方を解説していますので参考にしてください。
【DTM講座】オートメーションで曲を輝かせるテクニック集!!
ドラムにショートディレイを使い輪郭を作る
ドラムにショートディレイを使ったフレーズです。
ディレイタイムは10msでフィードバックは0に設定します。
少し輪郭の付いた音になります。
【DTM初心者講座】効率よくリアルにするドラムの打ち込みテクニック
リバーブを使う際の注意点
リバーブを使う上での3つの注意点がありますので解説します。
1.リバーブにはEQを使いローをカットする。
2.キックやベースにはかけない
3.センドで使うのが基本。フェーダーは-12dBあたり。
1.リバーブにはEQを使いローをカットする
2.キックやベースにはかけない
リバーブにはEQをかけるのがいいでしょう。
原音はいじらずにリバーブ音だけにEQを使います。
つまりエフェクト音だけにエフェクトをかけるということです。
特に低帯域をバサッとカットするのがいいでしょう。
この帯域にリバーブがかかるとぼやけた音になることがあります。
同様の理由でキックやベースにはリバーブが使われることは少ないです。
やり方は簡単です。
センドエフェクトのトラックの後段に使用するエフェクトを入れるだけです。
エフェクトをかける楽器のトラックではなくて、
エフェクトのトラックの後段に別のエフェクトを挿入するのです。
ここさえ間違えなければ大丈夫です。
エフェクト音のみにエフェクトをかけるテクニックはディレイにも使われます。
原音はそのままで、ディレイ音だけにコンプやEQまたはリバーブをかけることがあります。
3.センドで使うのが基本。フェーダーは-12dBあたり。
リバーブタイムは1.2sec辺りを基準にしてみてください。
ホールタイプなら少し短め、ルームタイプなら少し長めにするのもいいでしょう。
センドで使う場合はフェーダーで量を決めるのですがそこにも注意が必要です。
フェーダーは-12dB辺りで様子を見てその後微調整していくのがいいと思います。
空間系エフェクト 最後のひとこと
空間系エフェクトは使用頻度が高いですので、
基礎知識をしっかり身に付け使いこなせるようにしておきましょう。
元が冴えない音であってもエフェクトによって輝く、ということは珍しくありません。
初心者が陥りやすいのはエフェクトをかけすぎてしまい、
元の音より悪くしてしまうことです。
バイパスといってエフェクトを一時的にオフにして、エフェクトがかかった音と
かかっていない音を比較してその効果を確認する機能が付いていますので使いましょう。
空間系エフェクトに限らずエフェクト全体にいえることですが、
すぐに使いこなせるようになるものではありません。
コツコツと学び実践していくことで大きな力になるのです。
【コード進行のまとめ】初心者が覚えるべき8つのパターンを紹介!!
【音楽理論書】『ミックス・テクニック99』をレビュー
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