音楽系ブログとして立ち上げた当ブログですが、一通りの記事を書いてからはしばらく冬眠生活に入っていました。しかし、フジテレビ騒動においてメディアや国民のずれた主張を看過することが出来ず、久しぶりにブログを更新することにしました。それではさっそく本題に入りましょう。
フジテレビに設置された第三者委員会が、中居正広氏による性加害問題に関する調査報告書を公表しました。その中で、上層部の不適切な対応、ハラスメントの黙認、報道機関としての責任放棄などが明らかになり、テレビ番組等のメディアは一斉にフジテレビを非難することとなりました。
しかし、その非難のほとんどには賛同できるのですが、明らかにずれた主張も交じっており、問題が矮小化されたり被害者に対する二次加害になり得る危険性が出てきました。今回の記事ではAさんの対応にあたっていた佐々木恭子氏(報告書にあるF氏)に対して同情する論調に関して、被害者に寄り添う形で考えていきたいと思います。
第三者委員会による調査報告書(公表版)をまだ読んでいない方もいるかと思いますので、リンクを貼っておきます。こちらには事件の経緯や社内対応、問題点などが詳細に記されています。
第三者委員会調査報告書(公表版)
公表版は膨大な情報量で、すべてを読むのが難しい方のために、要点を整理した要約版も公開されています。第三者委員会調査報告書(要約版)
これらの文書は、フジテレビが設置した外部の第三者委員会によって作成・公表されたものであり、フジテレビの公式サイトでも閲覧できます。
引用:フジテレビ公式サイト企業情報
フジテレビ騒動の概要
元・SMAPの中居正広氏が、業務の延長線上で行われた会食においてフジテレビの女性アナウンサーに性加害を加えた事案が発覚しました。フジテレビ側は当初、被害を受けた女性の人権を守るためという理由を盾にして、事件の存在自体を公に認めず、説明責任を回避するような対応を取り続けました。さらに社長の記者会見も参加メディアを制限し、報道姿勢として大きな批判を浴びました。
フジテレビは外部の有識者による第三者委員会を設置し、事件の経緯や社内体制の問題について調査を依頼。調査報告書では以下のような問題点が指摘されました。
・タレントとの不適切な関係性(過度な接待や親密な距離感)
・社員によるリスク管理の欠如
・トラブル発生後の情報共有体制の遅れ
・組織全体としての危機対応力の低さ
フジテレビはスポンサーの離脱や番組広告の見直しを迫られ、経営上の打撃を受けることとなり、中居正広氏は芸能界を引退するなど深刻な影響が出ています。同時に、芸能界とメディア業界における「癒着体質」や「内部の論理」が問われる結果となりました。
佐々木恭子の対応の評価
調査委員会が立ち上がる前から佐々木恭子氏を非難する論調がSNS上などで出ていたわけですが、その理由を確認しておきましょう。
週刊文春が被害に遭われたAさん(報告書に出てくるAさん、文春ではX子さん)に取材を申し込み、そこでAさんの口からフジテレビや佐々木恭子氏らに対する怒りや不満が出てきました。そこで分かったのは、佐々木氏らは女性の被害の深刻さを理解せずに対応してしまい、女性を怒らせ傷付け守ることが出来なかったということです。
ここで週刊文春がAさんに行った取材の中身を一部引用しましたので確認しておきましょう。
「すぐに佐々木さんには事件のことを相談しました。それを聞いた彼女は『大変だったね。しばらく休もうね』と言うだけ……。守ってもらったという感じではありませんでした」
(中略)
ある日、佐々木アナはX子さんに対し、こう告げたという。
「Aさんには、このことを相談していないからね」
X子さんは取材に対し、強い憤りを口にする。
「それを聞いて『なぜ言わないんだよ。言えよ』って思いました」
こうして事件は握り潰されることとなった。
引用元:
中居正広「9000万円女性トラブル」X子さんの訴えを握り潰した「フジテレビ幹部」
(出典: 電子版 2025/01/07配信)
記事内に出てくるAさんとは調査報告書にあるB氏であり、X子さんは女性Aのことです。このB氏は報告書にあるようにに極めて問題のある人物で、中居氏や松本人志氏とも関係が深い人物と言われています。今回に限らず、今までに多くの会合において女性アナウンサーや女性社員を接待要因として扱い、その場に置き去りにしてハラスメントの加担をしていたことが分かっています。報告書の類似事案がその典型です。
ここに記している以外にも、Aさんに対して「中居と付き合ってたんじゃないのか」などと軽口を叩いた社員もいたとのことです。誰にも知られたくない性暴力の被害の実態をAさんが勇気を出して告白してくれたにもかかわらず、「加害者の中居と付き合ってたんじゃないのか」と侮辱する無神経さ。そして、記事内にはその発言を咎めた人物は出てきませんでした。
この報道があり、SNSやネット上で佐々木恭子氏に対する批判が生じたのです。
その後、第三者委員会が立ち上がりおよそ二か月間にわたる調査を行い、報告書が出されました。その報告書を読んだ人からは、「佐々木恭子は親身になって対応をしていた」「佐々木恭子は可能な限りAさんの支援を行っていた」などと同情や擁護をする声が挙がったのです。
しかし、私はこの同情論を一蹴します。当然、私も報告書の全てを読みましたが佐々木氏の対応が適切であったとは到底言えません。むしろ、佐々木氏らは極めて杜撰で被害者に寄り添わず共感出来ないまま対応していたことが分かります。
確かに、報告書の中には佐々木恭子(F氏)の苦しい立場が記されてはいます。まずはその点を確認しておきましょう。
心理支援の専門家ではない管理職が、PTSD を発症した部下とのコミュニケーションをひとりで担うことは困難であり、F 氏の精神的負担は大きかった。特に、番組降板の話は、アナウンサーとして業務復帰に向けて心の支えとしてきた大切なものが奪われたと感じる話であり、F 氏自身もアナウンサーとして女性 A の心情を理解できるだけに、辛い思いをした旨を述べている。産業医らのサポートがあったとはいえ、女性 A にとって辛い降板の話を、複数回、伝える役割をほぼ一人で担うことになったが、F 氏に対する会社としてのサポートは乏しかった。F 氏に課せられた役割は一管理職の職責を超えるものであり、この点でも CX の対応は不適切であった。(第三者委員会調査報告書《公表版》p44)
第三者委員会の調査報告書を高く評価する人が多いですが、少なくてもこの点に関しては第三者委員会の認識は甘く、被害者に寄り添っているとは言い難いです。その点に触れる前にアナウンサーを対象にしたヒアリングにおいて、同僚から佐々木氏を擁護する発言がありましたので合わせて紹介しておきましょう。
F 氏について週刊誌報道の内容が誤りである、週刊誌報道の内容に納得がいかないという声が多数寄せられた。(第三者委員会調査報告書《公表版》p143)
報告書にこうした記述があったことから、F氏である佐々木恭子氏に対する同情論が生まれたのです。ただし、これらの主張には強い違和感を感じます。報告書には「心理支援の専門家ではない管理職が、PTSD を発症した部下とのコミュニケーションをひとりで担うことは困難であり、F 氏の精神的負担は大きかった。」という記述があります。しかし、被害者の立場から見ればそのような事情は何ら関係ありません。ひとりで担うのが困難ならば周囲の人に助言や支援を求めればいいのです。被害者のことを真剣に考えていれば、そのくらいのことはすぐに出来るはずです。「週刊誌報道の内容が誤りである、納得いかない」との主張についてですが、これが先ほど紹介した週刊文春の記事の内容のことならば間違っていると言わざるを得ません。被害者自身が、佐々木氏の言葉や対応に強い憤りを感じていると述べているのです。これを軽視することは許されません。
佐々木氏が親身な対応を取っていたかどうかを判断するのは、この問題に関与していない第三者では全くありません。被害者自身です。
この当たり前のことを分からずに佐々木氏の対応を評価するなどありえず、佐々木氏の対応を批判したAさんに対する二次加害になり得る行為です。Aさんは週刊誌の取材に応じて佐々木氏らに対して憤りを露わにしていたわけです。その佐々木氏を擁護することは、本当に被害者に寄り添っていると言えるのでしょうか。高く評価されている第三者委員会ですが、彼らもまた被害者に対する二次加害を行っているのではないかと懸念しています。
佐々木氏がAさんのために奔走したのは事実でしょう。しかし、どんなにAさんのためを思って奔走したとしても、それが本人のためにならないどころか怒らせてしまったのであれば本末転倒です。結局、Aさんは当初から強く願っていたフジテレビへの復帰が叶うことなく退職せざるを得なくなり、そしてフジテレビの対応を批判することになった。これが全てです。
調査報告書の中で被害者のAさんが「F氏(佐々木氏)の親身な対応があったから救われた」ということが記されていたのであれば、佐々木氏の対応は良かったと言えますが、そのような記述はありません。週刊文春の取材にある被害者の憤りを覆す記述は見当たらないのです。せいぜい、Aさんが退職する際にE氏と佐々木氏にお礼のメールを送った程度です。これは社会人としての常識的な行為であり、それを持って佐々木氏の行為を評価することなど出来ません。無能な上層部とPTSDを患った被害者との間に挟まれるという状況には同情の余地はありますが、それでもAさんに対して取った対応を評価するなど出来ないのです。「置かれていた状況に同情すること」と「被害者に対して取った対応」は区別して考えなければいけません。
佐々木恭子はどう対応すべきだったのか?
私が佐々木恭子氏の立場だったならば上層部に次のような提言を強くします。
・「性加害は魂の殺人とも呼べる重大な人権侵害であり、AさんはPTSDになるくらいの深い傷を負っています。」
・「そのような深刻な傷を負ったAさんを心理職でもない私が一人で対応するのは不適切であり、Aさんの回復を阻害することになりかねません。」
・「この問題は性加害やPTSDに長けている臨床心理士や公認心理師に協力を仰ぎ、対応にあたってもらうべきです。」
いくらフジテレビの上層部が無能であっても、Aさんのことを心から心配し回復を願っていたのであれば、このような提言を粘り強くするべきです。しかし、佐々木氏はそれをしなかった。少なくても報告書には記されていません。一方、今回の第三者委員会の弁護士の方々はこの点を理解して、臨床心理士や公認心理師に協力を仰ぎ、調査に加わってもらったと報告書に記されています。実際に被害に遭ったAさんにヒアリングを行うわけですから、法的な視点だけでは不十分であり、心理支援の専門家を入れて対応にあたらせたのは正しい判断でした。これと同じことを佐々木氏をはじめとするフジテレビは行うべきだったのです。
誤解している人がいますが、佐々木氏が単独でAさんに対応していたという認識は事実に反しています。あくまでも会社(フジテレビ)とAさんとの連絡の窓口を佐々木氏に一本化したということです。もちろん、それでも佐々木氏に負担がかかっていたことは事実でしょう。しかし、フジテレビの産業医であるC医師や同じくフジテレビの精神科医であるD医師も事情を知っており、Aさんに話を聞いたり入院の手続きを行うなどの対応を行っています。Aさんが入院した先の主治医や中居氏と示談交渉をしたAさんの代理人弁護士も対応にあたっていました。この代理人弁護士は女性支援団体と関連がある人物ということですから、女性支援団体のスタッフの方もAさんの支援にあたっていた可能性もあります。よって、決して佐々木氏がAさんの対応をひとりで行っていたということはありません。
第三者委員会による報告書の中では、「心理支援の専門家ではない管理職がPTSD を発症した部下とのコミュニケーションをひとりで担うことは困難」ということが記されていました。繰り返しになりますが、だからこそ、周囲の支援を仰ぐべきだったのです。特にD医師は精神科医ですから、まさに「心理支援の専門家そのもの」です。Aさんは当初、被害に遭ったことを「誰にも知られたくない」と主張していたので、フジテレビ側としても外部に情報が漏れない形で対応しなければなりませんでした。しかし、C医師とD医師は最初にAさんの訴えを直接聞いた人物であり、さらには医師免許を持った医師ですから当然厳格な守秘義務が課せられています。外部の人間に情報を漏洩させる可能性は低いです。実際に報告書の記述からC医師がAさんの支援に尽力していた様子が読み取れます。当事者にしか分からないことはありますが、佐々木氏はもっとこの二人の医師に頼っても良かったのではないかと思います。
今回の第三者委員会による記者会見や報告書の中身はフジテレビの経営陣や上層部の人権意識の低さ、被害者に寄り添わず対応を決めたことが問題視されています。それはもちろん当然のことではありますが、それはフジテレビの経営陣や上層部だけが求められるものでは全くなく、こうした姿勢は特定の個人や組織に限らず、社会全体に問われている課題でもあります。もし佐々木氏が性加害の問題を真摯に学んでおり人権意識を高める努力をしていたのであれば、もっと適切な対応ができたのではないでしょうか。
ここまでの流れを見て、佐々木恭子氏の対応に不備があったことは分かっていただけたと思います。それでも「佐々木氏だけを執拗に非難するのは行き過ぎではないか」と疑問を持たれる方がいるのではないかと思います。しかし、佐々木氏には非難される相応の理由を持っています。はっきり言って私は佐々木氏は人権意識が低い人間だと考えているのです。それにはもちろん根拠があります。
なぜならば、佐々木恭子氏自身が性加害に加担していた疑惑があるからです。
佐々木恭子による性加害加担疑惑
第三者委員会では本事案の調査にあたり役職員向けホットライン設け、さらに類似事案の有無を調査することを目的として社外関係者向けホットラインを設けました。そして本事案と類似事案が発覚したにとどまらず、フジテレビ内でハラスメントが蔓延し常態化していたことが明らかになりました。その中でも、2つの類似事案が重要視されています。一つ目は2021年7月~8 月頃に行われたスイートルームの会であり、二つ目が10年以上前に行われた有力な番組出演者と会食でした。この2つの会において、いずれもフジテレビのB氏及び社員が女性アナウンサーを「置き去り」にしてハラスメントの被害に遭ったという報告がされています。前者には、タレントのU氏が関わっていたとされ、ネット上ではこの人物が松本人志氏ではないかとの憶測もあります。後者の会食にはとんねるずの石橋貴明氏の関与が取り沙汰されていますが、いずれも確証は得られていない段階です。
第三者委員会の調査に応じて協力したと述べる人物がいます。それがフジテレビの元アナウンサーである長谷川豊氏です。長谷川氏は以前からフジテレビのハラスメント体質を訴えており、自らも性加害の被害者であることを述べています。映画評論家のおすぎ氏にエレベーター内で無理やりキスをされたとの事案であり、この事案に佐々木恭子氏が加担していると主張されているのです。
以下はその長谷川氏とホリエモンこと堀江貴文氏との対談であり、被害の状況を語っています。この動画は、2025年4月13日時点で780万回という驚異的な再生数を記録しており、フジテレビの不祥事に対する人々の関心の高さがうかがえます。動画は約55分と長いのですが、長谷川氏の被害だけでなくフジテレビの体質に関しても語られており非常に有益な情報だと感じました。以下にその動画を貼り付けておきます。11分55秒あたりからが長谷川豊氏による性被害の訴えです。該当箇所(11分55秒あたり)から再生される設定になっていますので、そのまま再生していただくことで長谷川氏の証言部分をご覧いただけます。
当時、フジテレビで放送されていた「とくダネ!」の出演者であった長谷川豊氏、おすぎ氏、笠井信輔氏、佐々木恭子氏の4人で食事に行き、談笑していたとのことです。食事が終わりエレベーターを待っていると笠井氏と佐々木氏が先にエレベーターに乗り、笠井氏からは「ハセ、そういうもんだから」と、佐々木氏からは「お夕食代だね」と言われ置き去りされ、そして、おすぎ氏からの性加害を受けることになってしまったのです。これが先ほど紹介した調査員会の報告書にある類似事案と同様に、フジテレビの社員が立場の弱いアナウンサーを「置き去り」にして、性加害の加担をしたのではないかということです。
この事案は長谷川氏が男性であり、本人が被害の状況を堂々と語っているために被害の深刻さが伝わらないかもしれません。それでは、仮に長谷川氏が女性アナウンサーだったらどうでしょうか。被害者を「置き去り」にして、加害者に無理やりキスをされた。そして、PTSDになり涙ながらに被害を訴えたならばどうでしょうか。被害の深刻さが伝わると思います。しかし、男女を入れ替えると深刻さが伝わると感じてしまうことは問題です。ジャニー喜多川氏の性加害問題で明らかになったように、被害者が男性であったとしても、卑劣な性加害の被害者は酷く深く傷つき人生を破壊されるからです。
百歩譲ってこれは長谷川氏の一方的な主張ですから、冷静に見極める必要があるでしょう。佐々木恭子氏は反論があるならばしていただきたいと思います。しかし、長谷川氏の主張はリアリティがあり何より嘘をつく理由が見当たりません。これが作り話なら逆に訴えを起こされ損害賠償を請求されることになりかねません。また、この事案と思われる被害が報告書に記されています。
10 年以上前の事案であるが、男性社員が番組出演者からキスをされ、同席していた上司がこれを止めなかった(第三者委員会調査報告書《公表版》p142)
以上のことから、今回の中居・フジテレビ騒動では性加害に加担した人権意識の低い人間が性加害の被害者の対応を行い、被害者に二次加害を与え傷つけてしまった可能性があるということです。この点を留意しておく必要があります。
被害者の声なき代弁をやめる
佐々木恭子氏の立場は難しく、PTSDという深刻な症状を抱えた被害者との連絡を一人に任せられたことには同情の余地があります。しかし、その一点だけを見て、被害者に取った対応を被害者の声を無視する形で第三者が評価することはあってはならないのです。こうした「誤った同情論」がまかり通る社会では、真に支援を必要とする被害者が声を上げづらくなるという危険性があります。そして、表面的な対応を「親身」と評価してしまうことは、問題の根源を見逃し、被害が繰り返される社会を作ることにもつながります。
この記事へのコメントはありません。