今回はKing Gnuの『飛行艇』のレビューを行います。 この曲は、アングラ感や武骨さが前面に出た良曲です。 一方、曲の構成やアレンジには課題があるので、そのあたりをレビューします。
King Gnu『飛行艇』
イントロのギターフレーズは素晴らしいですね。 ギターの音色も曲に合っていて、一気にこのバンドの世界観に引き込まれます。 キックの低音も非常に良いです。力強さ、荒々しさが表現出来ています。
ドラムのフィルインを合図にして、他のパートが一気になだれ込んで来ます。 これもカッコイイですね。 ハイハットやスネアの音作りもよく出来ていて、文句の付けようがありません。
Aメロの歌のメロディーは優れています。
ボーカルの声質も曲の世界観にぴったり合っていますね。 二人のボーカルの声が上手くマッチしていて、カッコイイAメロになっています。
アレンジはイントロからかなり緩めて、落差が生まれています。 こういうギャップが生まれると単調さが薄まりますので、参考になるアレンジです。
歌とエレキギターとキックのみのシンプルなアレンジです。 キックは入れないほうが良かった気がします。 途中からシンセベースが加わっています。音もフレーズも曲に合っています。 良い味を出しています。
(0:51) Bメロがなく、サビに展開します。 この曲のサビには、長所と短所の両方があります。
サビのメロディーはカッコイイのですが、イントロのギターフレーズと同じですね。 因果関係はおそらく反対で、サビのフレーズをイントロに使おうとしたのではないかと思いますが。
これはよくあるアレンジではありますが、 イントロにサビのメロディーを出してしまうのは少しもったいないです。
いきなりネタバレをしてしまう感じなので、サビに対する期待感が薄れてしまったり、 サビのメロディーを聴いたときに 「ああ、イントロと同じか。」といった印象を抱かせてしまうことがあります。
サビの後の間奏にイントロと同じフレーズが来るのですが、 イントロ、サビ、サビ後の間奏の全てに同じフレーズが使われているので、 単調さが生まれているのです。
ボーカルの立場が逆転していますね。 高音のボーカルがメインになっていますが、これは逆のほうが良かったのではないでしょうか? この曲には高音のボーカリストより、 低音の荒々しくて男臭いボーカリストの声質のほうが合っているように思います。
リズム隊の淡々としてやや緩やかなテンポで進行していく世界観は、 独特の魅力があっていいです。 左右から聴こえてくるエレキギターも良い味を出していて、存在感があります。
(1:15) イントロと同じフレーズが出てきた後に、エレキギターのノイズ?を生かしたフレーズが出てきます。
変化の与え方としては非常に効果的だと思います。 この曲が少しアンダーグラウンド感がありますので、 このエレキギターのフレーズは曲の世界観と非常に合っています。
(1:39) 2回目のAメロは1回目と同じではなく、アレンジに工夫するのが基本です。
この曲は特に変化を与えていませんね。 ただ、Aメロを折り返すときにブレイクを入れています。これは意外性があって良いと思います。
ただ、ブレイク後には何か新しい音を入れたほうがいいです。 ハイハットか打楽器か、その両方をこの辺りから入れてもいいでしょう。少し寂しい感じがします。
(2:04) 2回目のサビは1回目と同じでしょうか。 ここでは変化を与えないことも多いので、おかしくはありません。
(2:28) Dメロがここから始まります。これまでの流れを切らずに、新しい世界を見せる必要があります。 この曲はまずまず上手に作られています。このパートは高音のボーカリストのほうが合っていますね。
アレンジも適度に緩められていて、いい感じに仕上がっています。 特に重厚なキックを抜いたのは大正解ですね。
キックの音は非常にカッコイイのですが、この音はずっと聴いていると耳が疲れるのです。 ですから、どこかで休ませる必要があります。この曲では一番良いタイミングで休ませています。
途中からもう一人のボーカルを加えていますね。音に深みが出て良いです。 これだけでも単調さや平坦な印象がだいぶ薄まります。
後半から徐々に盛り上がって行き、サビに対する期待感を高めています。このアレンジも非常に上手ですね。 最後にブレイクを入れてサビに進みます。このブレイクも上手な使い方です。
(3:17) 最後のサビは前のサビをそのまま繰り返すのではなくて、アレンジに工夫を施すのが基本のアレンジです。
この曲では転調させています。最後のサビで転調させるのは、 よくあるアレンジですが、この曲の場合は逆効果になっているように思えます。 もちろん私見ではありますが、この曲は前述のとおり、 低音のボーカリストの声質の方が曲の世界観に合っています。 力強さ、荒々しさ、アンダーグラウンド感、これらを考慮すると高音の声質は合わないです。
転調させたことで音域が高まりますので、それがより強調されてしまっています。
(4:05) アウトロはイントロと同じフレーズですね。 これもよくありますが、やはりくどい印象を与えてしまいます。
イントロとサビのフレーズが同じで、イントロと同じフレーズが、 最初のサビの後の間奏とアウトロで使われてしまっています。 数が多すぎるのです。どこかで独立したフレーズを使う必要があります。
この曲の場合は、アウトロはイントロとは違うフレーズを作った方が、遥かに良かったと思います。
King Gnu『飛行艇』の総評
曲の世界観やイントロのギターフレーズ、サビの雰囲気は非常に優れていましたね。 あとは視野を広げて、曲全体のクオリティーをどのように高めていくかが大切です。
作曲や編曲の勉強をされている方は、この辺りのことを参考にして、自分の曲に取り入れてみてください。
このブログを書いていらっしゃるのは、どなた様なのでしょうか。
音楽理論の元で批評しても、曲の解釈は人それぞれ違います。
この文章の書き方では、「ああ、こういうことか」という解釈を、他の人に植え付けることになりかねません。
簡単に申し上げますと、断定の言い方が多すぎるため、主観であることを、もっとアピールする必要があると考えます。
自由に曲を解釈して、沢山の人が曲を楽しめるよう、文の書き方を再度見直してみたらいかがでしょうか。
素晴らしい批評を見れて、作品を新たな目線で見ることができたのでとてもためになりました。ありがとうございます
改めて記事を読み直してみましたが、「~と思う。」「もちろん私見ではありますが」という記述があるように、私の主観であることを明らかにしており、断定の言い方は多くありませんね。
私自身何十年にもわたり多くの曲を聴いて自分でも作編曲を行っており、その経験を基に記事を書いています。
アーティストやファンに忖度をすることなく、明らかに良い、悪いという部分に関してははっきり指摘する姿勢で記事を書いております。
曲の解釈は人それぞれであることを理解していますし、論じる人間の主観を排除した論評など価値はありませんので、文の書き方を見直す必要は全くないと考えております。
「素晴らしい批評を見れて、作品を新たな目線で見ることができたのでとてもためになりました。」とのコメントをいただきありがとうございます。
引き続き音楽に関する考察を進めていかれることをオススメします。感性が養われることで音楽に対する見方が変わり、より楽しめるようになりますし、他者の論評に対する考えにも変化が出てくると思います。