フジファブリック『若者のすべて』切なさ溢れる良曲をレビュー

今回は読者の方からのリクエストがありました、
フジファブリックの『若者のすべて』のレビューを行います。

2曲リクエストがありましたが、『若者のすべて』のレビューのみを行います。

楽曲分析のリクエストは常に受け付けていますが、Youtubeに公式に
アップロードされている曲に限らせていただきたいと思います。

作詞者の志村正彦曰く、「夏の終わりの最後の花火大会が終わった後の
切なさや虚しさなど、感傷的になり考えてしまう所を歌った曲」。

引用: wikipedia

『若者のすべて』はこの言葉通り、上手に作られています。

コード進行をあえてあまり展開させず、各楽器のフレーズもシンプルなものを使用し、
せつなさ、センチメンタルな雰囲気を醸し出すことに成功しています。

一方で課題も見つかりましたので、そのあたりも合わせて指摘していきたいと思います。

あわせて読みたい
▶今まで投稿した楽曲分析の記事はこちらから読めます。

フジファブリック『若者のすべて』

作詞: 志村正彦 作曲: 志村正彦 全編曲: フジファブリック

・イントロとAメロとBメロのレビュー

Key in Dbということもあり、ギター、ベースのチューニングを
ハーフステップダウンにしてありますね。

ハーフステップダウンとは全ての弦を半音下げるチューニングのことです。
演奏者はKey in Dのつもりで、コード進行またはフレーズを奏でます。

全ての弦が半音下にチューニングされていますので、
結果としてKey in Dbで弾いていることになるのです、

ここでのポイントは

「なぜ手間をかけてまでKey in Dbにこだわるのか?」

です。

面倒なことをするくらいならノーマルチューニングのまま、
Key in Dの曲として演奏すればいいのです。

しかし、それをしなかったのには理由があります。

作曲者に聞いたわけではありませんので、推測することしか出来ませんが、
おそらくこの曲は「Key in Dbが最も輝く」と判断されたのでしょう。

例えば、同じメロディーだったとしてもKey in CとKey in Dbで、
移調させて聞いた場合、異なる印象を受けると思います。

曲を作る過程の中で「この曲はハーフステップダウンにしてでも、
Key in Dbで演奏しよう」と考えられたのではないでしょうか。

作曲者及びこのバンドの「優れた作品を作りたい」という強いこだわりが感じられました。

コード進行はDb on F→Gbの繰り返しになっていて、この進行がBメロまで続きます。
つまり、イントロとAメロのコード進行はまったく同じということです。

イントロのフレーズはシンプルではありますが、細かいところに気を配っていますね。

スネアは普通に叩かず、クローズリムショットを使っています。
正しい判断だと思います。

ピアノは2分音符でDb音をオクターブで淡々と弾き、
ベースもルートを8分音符で鳴らすだけ。アコギも同様にシンプルになっています。

この淡々とした演奏が独特の世界観を生み出すわけですが、
さすがにこれだけでは寂しいので、アレンジに一工夫凝らしてあります。

エレキギターがピアノと同様にDb音をオクターブで弾くのですが、
モジュレーション系エフェクトをかけて、単純さを薄めていますね。

必要な音を確実に使用しています。

(0:17)
Aメロの歌のメロディーとボーカルの歌声は合っていていいですね。
最初の一声で曲の世界観に一気に引き込まれます。

アレンジはイントロと同じものです。

淡々とした雰囲気にボーカルの歌声が鳴り響いています。
そこにモジュレーション系のエフェクトが曲を彩っていますね。

(0:48)
Bメロの歌のメロディーは秀逸ですね!素晴らしいメロディーです。

Aメロでは低めの音域で淡々と歌っていたものが、Bメロに入り、
高めの音域を使って少し声を張り上げています。バランスが非常にいいです。

コード進行も変えて、曲を上手に展開させています。
アレンジの変化は乏しいですが、特に気になりませんね。

サビに入る前にV→Iでいったん曲を完結させて、
サビで仕切り直すという形になっています。

流れが一回途絶えるので、この構成にするかどうかは悩ましいところです。

バラードの場合はこの構成でいいのですが、この曲はBPM124なので
最初は少し気になりました。しかし、改めて聴いてみたら全然問題ないですね。

このあたりの詳しい解説は以下の記事に書いてあります。

あわせて読みたい
【作曲の悩み】Bメロとサビのメロディーが上手くつながらないときの対処法

 

サビに入る直前にはギターとベースのフレーズの後に、
ピアノのオクターブの駆け上がるフレーズが使われています。

このコンビネーションはなかなかカッコイイですね。

・サビのレビュー

(1:18)
サビの歌のメロディーもなかなか美しいですね。

リズムに特徴がありますので、少し解説をします。

「タータター」という同型のリズムになっているので、リスナーの耳に残りやすいのです。

「ないかなー」「ないよなー」「きっとねー」「いないよなー」
この部分が一番分かりやすいでしょうか。

少し音を付け足したりしていますが、基本は同じリズムでメロディーが作られているのです。

JPOPのヒット曲には同型のリズムで作られたヒット曲は多いですので、
自分で曲を作る際には参考にするといいでしょう。

ちなみにBメロも同型のリズムでメロディーが作られています。

ただ、美しいだけでなく、覚えやすくて歌いやすい。
このあたりがリスナーから愛される理由でしょう。

強いて苦言を呈するならば、サビよりBメロのほうが優れている点でしょうか。

好みの問題もありますが、私はサビのメロディーより
Bメロのメロディーのほうが好きですね。

Aメロは少し低めの音域の音を使っていて、コード進行も単純です。
それに対してBメロはコード進行を変えて展開させ、歌の音域もAメロより高い音を使っています。

このように作るとA→Bに進めたときに、Bメロの歌のメロディーが
目立ちやすくなっているのです。新しい世界が開けた、という感じでしょうか。

それに対してB→サビでは歌のメロの音域に違いがあまりないので、
サビ全体の盛り上がりは少し欠けてしまうのです。

サビのアレンジですが、モジュレーション系エフェクトをはずして
歪み系のギターを入れてますね。

コーラスパートも加わっているので、それなりに盛り上がっています。

・2回目のA、B、サビのレビュー

(1:53)
2回目のAメロのアレンジには何かしら変化を与えます。

ここではクローズリムショットを止めて、普通のスネアを加えています。
変化の付け方としては悪くないのですが、1、2、3、4拍目の全てにスネアを入れる必要はありません。

スネアを多用するとやや激しいサウンドになるので、
この曲のセンチメンタルな雰囲気と合わないような気がします。

普通の8ビートのほうが良かったです。

Aメロを半分の長さにしていますね。これは正しいアレンジです。
早めにBメロ、サビに展開させるのが適切です。

(2:08)
ドラム以外はアレンジに変化はありません。
やはり1拍目のスネアが少し気になります。

サビは盛り上げたいので手数を増やすのはいいのですが、
A、Bメロでこのリズムパターンはいまいちですね。

サビの最後の「まぶたとじてうかべているよ」の部分。
1回目のサビとは違うコード進行にして雰囲気を変えていますね。

その後の間奏の最初のコードがBbmなので、それを意識したコード進行に変えたのでしょう。
細かいですが、いい変化のつけ方だと思います。

・間奏とDメロのレビュー

(3:10)
間奏では今まで出てこなかった(目立たなかった)エレキギターでソロフレーズが奏でられます。
新しい音が出てきたと感じるので、新鮮味があります。フレーズもまずまずいいですね。

ディミニッシュコードがいいアクセントになっています。

ベースは、やや高い音域で4分音符でのフレーズに変えています。
クリシェが使われていますので、ベースも目立っています。優れたアレンジではないでしょうか。

ドラムはスネアを抜いていますが、抜く必要はありませんね。
2回目のA、Bメロで抜いて(抑えて)、ここで使用したほうがいいです。

(3:26)
ここでDメロが出てきます。
間奏とDメロが出てきて、曲が次々展開されていい感じです。

Dメロの歌のメロは及第点。もう少し良いメロディーが作れたと思います。

今度はベースラインが8分音符でクリシェになっています。
このあたりも切なさを生み出す要因でしょう。

ドラムは普通の8ビートになっています。これでいいです。

最後のサビの直前ではブレイクを入れています。
それはいいのですが、ここで出てくるピアノとギターのフレーズは悪い出来です。

ブレイクを使う理由はいくつかあります。ここでは静かな雰囲気を作り、
特定の楽器のフレーズを目立たせるために使われています。

それならばここのフレーズは優れたものを用意しなければいけません。

この曲のようにブレイクで静かな雰囲気を作った後で、
いい加減なフレーズを演奏してしまうと、悪い部分が目立ってしまいます。

・最後のサビとアウトロのレビュー

最後のサビにはアレンジに一工夫入れるのが一般的です。
この曲の最後のサビのアレンジは優れていますね。

まず、コーラスが1と2回目のサビとは異なるフレーズに変えてあります。
(1と2回目のコーラスにも違いがあります)

途中からエレキギターのソロフレーズを加えて盛り上げていますね。
歌のメロディーも「かわるかな」で少し高めの音域の音を使って、盛り上げています。
どちらもいいアレンジです。

最後が少しもったいないですね。
キメフレーズを使って盛り上げているのですが、ややいまいちです。

キメフレーズに入る前に、ドラムで何か短いフィルインを入れた方が良いです。
唐突にキメフレーズに突入した印象を与えますので、簡単なものでもいいので、
フィルインを入れたほうがいいです。

キメのドラムもいまいちですね。クラッシュシンバルの音がうるさいです。
シンバルの数を減らしたほうがいいです。
盛り上げたい気持ちはわかりますが、タムやスネアをもっと交えた方が良いです。

(4:30)
アウトロはほぼイントロと同じですが、ここでもスネアの使い方が問題です。
不要な音ですね。明らかに無いほうがいい音です。

「夏の終わりの最後の花火大会が終わった後の切なさや虚しさなど、
感傷的になり考えてしまう所を歌った曲」。

それならばこの曲の物語の最後のアウトロでは、切ない余韻を残すべきです。

イントロと同じように、クローズリムショットを使ったほうがはるかに良かったです。
2,4拍でスネアが鳴っていても不満が残りますが、1,2,3,4拍の全てにスネアが
鳴らされてしまっています。明らかに悪いアレンジですね。

他のパートは無難な出来だけに、少しもったいないと感じました。

あわせて読みたい
▶今まで投稿した楽曲分析の記事はこちらから読めます。

 

・総評

曲のメロディーは非常美しいですし、ボーカルの歌声と合っていて、優れた曲でした。

AメロからBメロへの展開が特に優れていると思います。何度も聴きたくなる感じです。

サビのメロも良かったので、「作曲」には問題なかったです。
一方でアレンジにはいくつか課題がありました。

特にスネアの使い方は不満が残ります。曲全体に言えることですが、
入れる必要のないスネアが入ってしまってます。

イントロではクローズリムショットを使ったので、少し期待をしていたのですが、
悪い意味で裏切られてしまいました。

ピアノも思いのほか目立たないですね。
意図したかもしれないが、間奏やDメロあたりで目立つフレーズを入れるのもいいと思います。

曲全体の雰囲気、そしてメロディーが優れているので、
多くのリスナーから愛されている理由は良く分かりました。

フジファブリックの他の曲にも関心が出てきましたので、
良い曲があれば、また楽曲分析してみたいと思います。

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