今回は中島美嘉の『雪の華』のレビューを行います。
完成度が高く、芸術作品とも呼べる一曲になっています。
雪の華の魅力を余すことなく語りたいと思います。
※コード進行の分析が遅れていますが、時間があるときに行いたいと考えております。
この楽曲分析は作曲や編曲を学ばれている方向けの内容になっています。
このレビューに関してはそのアーティスト個人の評価だけでなく、
編曲家や演奏家に対するものも含まれます。ご了承ください。
中島美嘉『雪の華』
作詞:Satomi 作曲・編曲:松本良喜
プリイントロがエレピで奏でられています。
サビのメロディーを活用したフレーズになっています。
プリイントロとはメインのイントロの前に出てくるフレーズです。
このプリイントロは入れたほうが断然よかったです。
無いまま始まっていたらやや淡白なイントロになっていたと思います。
プリイントロがエレピに対してイントロは
アコースティックピアノが使われています。
これはやや珍しいアレンジでしょうか。
私が知る限り、このアレンジが使われた曲はあまり知りません。
イントロはストリングスが先行する形で始まりピアノの伴奏が始まります。
『これから始まる物語に期待を持たせるイントロ』になっています。
(0:35)
通常の曲はサビのメロディーが一番心に響くものですが、
この曲のAメロは、切なくなるようなメロディーで非常に美しいです。
このAメロを聴いた瞬間に、涙腺が緩む人もいるのではないでしょうか。
それくらいこの曲のAメロと中島美嘉さんの歌声がマッチしています。
伴奏はピアノとベースが補足程度に入っているだけですが、
これは正しいです。詳しくは後で語ります。
(2:13)
2コーラス目のAメロではアコギやリズムが加わっています。
これは普通のアレンジですが、ストリングスが入るタイミングと
入り方が絶妙ですね。
一番必要な音が一番欲しいタイミングで入っています。
編曲家のセンスが光り輝いていますね。
個人的な意見ですが、サビのメロディーも良いのですが、
サビよりAのメロディーが切なくてとても好きです。
雪の華のAメロ。
文句のつけようがない完璧な出来だと思います。
(1:03)
Bメロは、Aメロの流れを引き継いだ綺麗なメロディーになっています。
途中転調を絡めて、メロディーにも味付けされていて良いです。
サビに向かって高揚感が高められています。
何も問題ありません。
(1:29)
1コーラス目のサビは、我慢してピアノ中心のアレンジで抑えています。
通常の曲は1コーラス目であっても、
AメロとBメロで抑えて、やはりサビを盛り上げたくなるのです。
しかし、この曲は我慢しています。
なぜ我慢したほうがいいかというと、このあとの展開との「差」を
付けたほうが楽曲のクオリティーが高まるからです。
2コーラス目のAメロではアコギやリズム隊が加わるので
少し盛り上がった雰囲気になっているのです。(2:13)
それから何といっても2コーラス目のサビと最後のサビとの
「違い」を出すためです。
同じアレンジが続くと単調さが生まれてしまうのです。
この曲はそれを見事に避けています。
1コーラス目は緩和した状態を保ち、2コーラス目に進行させて盛り上げ、
曲のクオリティーを上げているのです。
強いて言うならば、パーカッションの鈴の音も入れないほうが良かったですね。
そのほうがもっと「差」を付けられて、いいアレンジになったと思います。
サビのメロディーは美しく、声質とも合っていて良いですね。
最初のサビの後のフレーズはイントロと同じものです。
これはよくあるパターンです。
ただしまったく同じではなく、ウインドチャイムが加えられています。
これにより、世界が開けていくような印象を与えてAメロに展開します。
ベースのグリッサンドも良い味を出していますね。
これがあるのと無いのとではまったく違います。
2コーラス目のサビのアレンジを聴いてみてください。(3:08)
多くの楽器でサビのメロディーを彩り盛り上げられています。
1コーラス目のサビも、同じアレンジだったらどう思うでしょうか?
1コーラス目のサビは「綺麗な曲だなぁ」と思っても、
2コーラス目のサビは「さっきと同じアレンジかぁ」と思われてしまいます。
こういう単調さというものが楽曲のクオリティーを下げるのです。
編曲家は知恵を絞り、そうならないように工夫を施しているのです。
ストリングスの駆け上がりは音量が少し足りないです。
綺麗なフレーズですから、もう少ししっかり聴かせたほうがよいですね。
2回目のサビからDメロのへの展開は非常にスムーズです。
ストリングスのフレーズが鮮やかですね。
キメフレーズも使われていて心地よいです。
Dメロの出来も素晴らしいです。
サビの勢いを引き継ぐかたちで次の展開へと進んでいき、
リスナーを新たな世界へより深く誘っています。
最後まで盛り上げておき、次の落ちサビへと進みます。
落ちサビとのアレンジのギャップがすごくいいです。
派手に盛り上げておいて、スッと静かな空間を作る。
これで一段と曲に引き込まれるのです。(4:10)
落ちサビとは静かなサビのことで楽器の数を減らすなどをして
静かな空間を作り出します。
この曲ではボーカルとピアノだけというシンプルなアレンジになっています。
最後のサビに向かって盛り上げていくのですが
ドラムのフィルインがいまいちですね。
この曲は良いところのほうが圧倒的に多いですが、
ドラムのフレーズはいまいちです。
(4:28)
最後のサビもよく出来ています。
ラストの部分ですがフレーズを繰り返し、
そして少しじらして最後のフレーズが歌われます。
ドラマティックな世界観が見事に作り上げられていますね。
アウトロはイントロと同じフレーズですね。
これもよくあるアレンジです。無難に曲を締めていると思います。
中島美嘉の『雪の華』の総評
2019年にこの曲がモティーフにした映画が公開されました。
映画の評価に関しては見ていませんので何もいえませんが、
曲がモティーフとなり映画化されるというのもすごいですね。
それだけこの『雪の華』が素晴らしい曲だという証でしょう。
曲のクオリティーは非常に高く芸術作品といっても
過言ではありません。
いくつか悪い点を上げますが、ドラムのフィルインはやや淡白です。
この曲はドラム全体にいまいちで、スネアの音があまりよくありません。
ハイハットももう少し曲に合う音があったと思いますけどね。
それに対してストリングスは全て綺麗なフレーズで見事です。
メロディーと歌声も素晴らしく、曲の構成も完璧です。
2003年の曲ですが、今も色褪せず輝いている曲です。
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