今回は『コード編曲法 ~藤巻メソッド~』著者: 藤巻浩をレビューしていきます。
付属DVDに楽譜や音源などが豊富に含まれている本書は、
他の専門書を圧倒するぐらいに魅力を持っています。
その辺りをレビューしたいと思います。
『コード編曲法 ~藤巻メソッド~』
この世界には様々なジャンルの音楽があります。
本書の『コード編曲法』というタイトルでは、どのジャンルの音楽について
解説されているかは分かりづらいでしょう。
本書はチャイコフスキーの「弦楽セレナーデ」冒頭7小節のメロディーを使い、
編曲を学んでいくという内容になっています。
チャイコフスキーの曲を使うということでクラシック寄りの内容になっているのではないかと
危惧される方がいるかもしれませんが、その心配は無用です。
本書では同じメロディーを使いながら、以下の12のジャンルの音楽を編曲します。
1.ボサノバ
2.トランス
3.ロック
4.ファンク
5.ソウル
6.ディスコ
7.テクノ
8.レゲエ
9.サルサ
10.ハウス
11.アンビエント
12.ジャズ
上記のジャンルの編曲についてだけでなく、これらの音楽がどのように生まれたのか、
どういう特徴があるのかといった音楽史や雑学も語られています。
このような知識が編曲にどれだけ役に立つのかは未知数ですが、見聞を広めることはいいことです。
序章では音楽理論の基礎について触れられていますが、詳しく解説されていないので、
他の理論書で一定の知識を身に付け、さらには作曲および編曲の経験があると
本書の内容をより深く理解出来るのではないでしょうか。
同じメロディーに対して様々なコードを付けることが出来る、ということが解説されています。
いわゆる「リハーモナイズ」のことです。理論に基づきコードを付けるというよりも、
感性に頼りながら付けられている印象があります。
どのパターンも自然な仕上がりになっているので参考になるでしょう。
各ジャンルの音楽の編曲について、楽譜、画像、イラストが本書に豊富に掲載されています。
付属DVDには楽譜(PDF)やデモソング、MIDIデータが収録されています。
エフェクトやソフトの画像も収録されていますので、
どのようにセッティングしたらいいのかも分かるようになっています。
コード編曲法の特徴 音声による解説データ
楽譜や音源は充実しています。私が知る限り、これ以上充実している専門書に出会ったことはありません。
音声データやMIDI、PDFと十二分に収録されているので、満足できます。
合計で475分ということで、他の専門書とは比較にならないほど情報量が圧倒的に多いです。
著者の学習者に対する愛や情熱が強くこめられているのが伝わります。
PDFの楽譜は読みづらいですね。1ページに8小節掲載し、しかも2段重ねになっているので、
無理に横に広げて、凝縮したような楽譜になっています。
物によっては拡大しても見づらいというものもありました。
本に記載されている楽譜は読みやすいです。
通常楽譜は1ページに3~4小節で、紙を縦にして記譜されます。
音源のクオリティーは高いです。これだけのジャンルの音楽を、
一人でこのクオリティーで編曲出来るというのは、著者の実力が高いことの証ですね。
非常に珍しいのですが、この本の著者である藤巻浩さんはYoutubeのチャンネルをお持ちで、
コード編曲法を紹介されていました。こちらもとても良い内容になっていますので、見てみましょう。
【音楽理論書】『アレンジャーが教える編曲テクニック99』をレビュー
コード編曲法はどんな人に向いているのか?
良い面が多い本書ですが、「誰にむけられて書かれた本なのか」については冷静に考える必要があります。
編曲を学ぶ学習者にはそれぞれ異なる目的があります。
特定のジャンルの編曲について学びたいという人には、本書は向いていません。
前述のとおり、本書には12のジャンルの編曲について書かれています。
この12のジャンルのすべてに興味があるという人には最適の本ですが、
実際にはそのような人はいないでしょう。
しかし、12の内のいくつかのジャンルに関心があるならば購入するべきです。
他の編曲の専門書を圧倒する内容ですので、迷う必要はありません。
テンションノートやディミニッシュコード、UST(アッパーストラクチャートライアド)
といった言葉が出てくるので、音楽理論の知識がある程度ないと本書の内容についていけません。
本書は作曲や編曲の初心者が手を出すものではありません。
一定の知識と経験を身につけた上で学ぶのが良いでしょう。
仮に購入して内容が理解出来なくても、捨てたり売ったりせず手元に置いておくといいです。
力を付けた後に再度読んで学んでみてください。
本書の優れた内容があなたの音楽活動を支えてくれることは間違いありません。
最後のひとこと
編曲を学ぶには楽譜と音源が必要なのは間違いありませんが、
本書はその数が非常に豊富でクオリティーも高いです。
音声データに関してはすでにお伝えしていますが、475分収録されているので、
本の見た目以上に情報量が多く濃厚な専門書になっています。
12のジャンルの音楽を編曲するという条件があなたに当てはまれば、
最高の編曲のバイブルになることは間違いありません。
この記事へのコメントはありません。