JPOPの曲を聴いてみると、一曲の中にサビが複数回出てくることは珍しくありません。
サビは一番聞かせたい部分なのでそれは当然のことです。
その際に注意するべき点としては、最後のサビは前のサビをそのまま繰り返さないということです。
リスナーから愛される優れた音楽は『単調』『平坦』『退屈』といったものを避けなければなりません。
最後のサビの編曲とその直前では一工夫させるのがおすすめです。
今回は実際の曲名を挙げながら様々なアレンジのテクニックを紹介していきます。
最後のサビの前に落ちサビを入れる
間奏を終え最後のサビに進行する際に、落ちサビが用いられることがあります。
落ちサビとは静かなサビのことで、前のサビのアレンジから楽器や音数を減らしたり、
音量を下げて作り出します。
落ちサビの前のフレーズが盛り上がっていてその流れで落ちサビに移行すると、
緊張した状態から緩和した状態へと進み、曲にメリハリがつくのです。
MISIA の『Everything』はこの編曲テクニックが上手に使われています。
最後のサビ参考曲1 MISIA 『Everything』
※4:57あたりから間奏が始まります。
手数の多いドラムフレーズ、ボーカルやストリングスが調和されたフレーズが絡み合い、
そしてキメフレーズ→ブレイクで静かな空間を作り出します。
キメフレーズとはほとんど又は全てのパートを同じリズムで演奏することです。
この曲のようにブレイクとセットで使われることもあります。
緊迫した雰囲気から一気に解放された印象を与えるので、この編曲テクニックは非常に有効です。
ずっと盛り上がったままの編曲ではリスナーも疲れてしまいますし、冒頭でも述べたように単調な印象を与えてしまうのです。
この落ちサビで緩められた雰囲気から最後のサビに展開することで、最後のサビの派手な雰囲気がより強調されるということです。
間奏の作り方が分かりません!プロの曲からコツを学ぼう【編曲講座】
最後のサビで転調させるテクニック
JPOPでは最後のサビを盛り上げるために、半音または全音上の調に転調させることがあります。
転調させるときにはリスナーに対して前もって転調させることを知らせるやり方と、
知らせずに突然転調させて、「はっ」とさせるやり方の2種類があります。
どちらにも良さがありますので、自分の曲で転調させるときにはよく考えて行ってください。
最後のサビ参考曲2 宇多田ヒカル『First Love』
宇多田ヒカルの『First Love』では、最後のサビに入る前に転調させることを前もって知らせていますね。
(3:02~)非常に美しい転調です。サビのメロディーが優れているので、
相乗効果で曲が盛り上がっています。ドラマティックなサビになっています。
もう一曲紹介しましょう。
最後のサビ参考曲3 Superfly『愛をこめて花束を』
Superfly『愛をこめて花束を』では、ブレイクを入れてから最後のサビに展開しています。
(3:35~落ちサビ→最後のサビ)
リスナーには転調させることを知らせずに転調させるやり方ですね。これも効果的な転調です。
ただ、多くの音楽を聴いて経験を積むと「ここで転調するな」と分かることが増えてきます。
この曲も比較的わかりやすく転調しています。
これらの曲のように転調させることで少し高い音域を使うことになりますので、
盛り上がったサビになります。雰囲気も変えられますので一石二鳥ですね。
転調を上手に使いこなせるようになると、作曲の力が伸びますので必ず習得しておきましょう。
最後のサビの編曲は力を溜めてから爆発させろ!
JUDY AND MARYの「Classic」ではDメロの後に最後のサビ進みます。
(動画を埋め込めなくて申し訳ございません)
Dメロの終わりの部分は長い音符で形成されていて、その流れで普通にサビに入ることも出来ます。
しかし、この曲では一工夫施されています。
最後のサビの直前にブレイクを入れ、ボーカルを際立たせる形で、
サビの頭のフレーズを2回繰り返してから最後のサビに入ります。
ブレイクとは、ほとんど又は全てのパートを一時的に休ませ、静かな空間を生み出す、
リスナーを「はっ」とさせる編曲テクニックのことです。
この『Classic』ではボーカル以外でブレイクさせ、
ボーカルの歌声だけを目立たせるテクニックが使われています。
よく使われる編曲テクニックなので必ず覚えましょう。
普通にサビに入ってテンションを爆発させるのではなく、
少しじらして力を溜めてからサビに入っています。
頭の中で同じフレーズを繰り返して力を溜めたパターンと繰り返さなかったパターンを比べてみましょう。
繰り返した方がはるかに優れているのが分かるはずです。
この「力を溜めるという編曲のテクニック」は初心者の方で
身に付けている人は非常に少ないので、ぜひ習得してください。
最後のひとこと
いかがでしたか?今まで知らなかった編曲テクニックもあったのではないでしょうか?
映画や小説はよほど自分が気に入った作品でない限り、一度楽しんだらそれで終わりです。
何度も同じ作品を繰り返し見たり読んだりはしません。
それに対して音楽というのは繰り返し何度も楽しむことが出来ます。
10回でも100回でも聴いて楽しめる娯楽なのです。
そういう特性があるからこそ退屈さや単調さを生み出さない編曲のテクニックを学ぶ必要があるのです。
どんなに音楽が何度も楽しめるといっても、同じフレーズを同じアレンジで何度も聴かされたら
さすがに「もういいや」と思われてしまいます。
編曲というのは実に様々な役割を持っていて、
ただメロディーに対して様々な楽器を加えて華やかにするのではなく、
いかにしてリスナーを飽きさせないようにするのか、ということも考える必要があるのです。
今回紹介した最後のサビの編曲テクニックも一部ですので、
あなたも自分で色々な曲を聴いて研究してみましょう。
そして自分の曲でも試行錯誤を繰り返しながら実践していくのです。
最初から上手くいかなくても心配要りません。
どんなに優れた編曲家であっても、最初はみんな苦労しているのですから。
【音楽理論書】『コード編曲法 ~藤巻メソッド~』をレビュー
この記事へのコメントはありません。