転調させると曲の雰囲気を変えることが出来て、ドラマティックな印象を醸し出すことが出来ます。
本格的転調という言葉は一般的に使われていないと思いますが、
私の記事ではセカンダリードミナントのような一時的な転調と区別するために使っていきます。
本格的転調とは一時的な転調と異なり、ある部分から一定の間、
あるいは曲の最後まで別の調へ変わることをいいます。
転調することによりそれまでの曲とは違った雰囲気になりますので、
上手に使いこなすことが出来れば音楽性の幅が大きく広がりますよ。
半音上の調へ転調
これから転調の例をいくつか紹介します。
転調のテクニックを学ぶためには、元の調から見たコード進行と
転調後のコード進行の両面を見ていく必要があります。
そのあたりは楽譜に記してあるので、参考にしてください。
元の調は、例外はありますが基本はKEY in Cになっています。
JPOPでは最後のサビで半音上の調に転調することが多いので、
その転調のやり方から解説します。
元の調と新調のツーファイブを連続させることで転調させることが出来ます。
具体的なコード進行はDm7→G7→D#m7→G#7→C#といった感じです。
楽譜と音源を用意してありますので、目と耳でしっかり学びましょう。
ツーファイブの連続によって半音上の調に転調するやり方を紹介しましたが、
新調のツーを抜いても可能です。
Dm7→G7→G#7→C#7の進行でも転調できるということです。
こちらのやり方の方がシンプルかもしれませんね。
新しい調のV7を直前に入れるという転調法はよく使われますので
覚えておきましょう。
V7の特性を活かした転調
Ⅴ7からは様々なコードに進行させることができます。
Ⅴ7の後に適当なコードを入れたとしても、案外上手に転調できるとは思いますが、
初心者の方に「自由にやれば良い」と言ってもどうすればいいのか分からないでしょう。
そこで1つの基準を設けてみました。
V7コードには導音があります。
導音は短2度上行して主音へ進行したがる特性がありますので、
それを活かしてみましょう。
導音やドミナントモーションのことを知らない方は、
以下の記事に書かれているので読んでみてください。
具体的にはG7の後のコードに、Key in Cの主音である
ドの音を含んだコードを入れてみるのです。
例えば、AbやAm、FやFmが挙げられます。
後続のコードに主音が含まれていない場合は、
導音を保留または増1度の音がある場合はその音を結んでみましょう。
譜面を用意しましたので見てみましょう。
導音を保留させる場合、後続のコードに挙げられるのは
BやBm、EやEmなどです。
導音を増1度下行させる場合、後続のコードに挙げられるのは
EbやEbm、BbやBbmなどです。
Ⅴ7から転調させるときには導音を主音へ、または保留、増1度下行(上行)させるという
やり方から始めてみるのがいいのではないでしょうか。
V7から新調のIへ転調
G7→Abの場合は通常のドミナントモーションのときと同じように、
シはドへ、ファは2度下行するという連結になっています。
ですから、自然なコード進行になるのです。
ここではKey in CからKey in Abへと転調させる例を挙げてみます。
AbをKey in AbのIとして解釈し、その後のコード進行を作りました、
それでは実際に転調の響きを聴いてみましょう。
V7から新調のIVへ転調
先ほどの転調は、コード進行のAbをKey in AbのIとして解釈して、
Key in CからKey in Abへと転調させました。
新調のコードの解釈の仕方には様々ありますので、
そのあたりの解説をします。
AbをKey in EbのIVとして解釈することも出来ます。
するとKey inCからKey in Ebへと転調させることも出来るのです。
先ほどのコード進行とC→Em7→F→G7→Abまでは同じですが、
そこからはKey in Ebの王道進行(IV→Ⅴ→IIIm→VIm)を入れることが出来るのです。
コード理論の知識に自信がある方は以下の記事を読んでみましょう。
セカンダリードミナントを発展させて、新しいコード進行を作る方法を解説しています。
V7の導音を保留させる転調
先ほど解説した通り、導音を保留させる形で転調させることが出来ます。
ここではKey in C→Key in Bへ転調させてみましょう。
具体的なコード進行はC→F→Dm→G7→Bになります。
G7の導音であるシの音を保留させてみてください。
レやファは増1度(半音)の関係になっているので、
連結させてあげるのがいいでしょう。
ツーファイブワンからの転調
これまでは元の調のV7からの転調の方法を紹介してきました。
ここではツーファイブワンから新調のⅤ7を入れて転調させた例を紹介します。
V7からの転調は、流れを途絶えさせることなく新しい調へ転調するのに対して、
ツーファイブワンでいったん完結してから、新しい展開へと進みます。
転調させる目的に応じて、転調方法を変える必要があるのです。
Key in CからKey in Dへの転調方法を用意しました。
Dm7→G7→Cで終わらせてから、Key in DのV7である
『A7』を入れるのです。さっそく聴いてみましょう。
ツーファイブの連続で転調
ツーファイブの連続で転調する方法を解説します。
冒頭に紹介した、半音上の調に転調させる際にも同じ転調を使いましたが、
半音上の調以外の調にも同様のやり方で転調させることが出来ます。
具体的なコード進行はDm→G7→Cm→F7→Gbです。
Key in CのツーファイブであるDm→G7の後にKey in Bbのツーファイブである
Cm→F7を入れた転調です。
解決されるコードが♭Ⅵになっているのがポイントです。
Cm→F7の後にはBbに進むのが普通ですが、ここではあえてGbを入れています。
これによりKey in C→Key in Bb→Key in Gbと2回転調させているのです。
目的の調に一発で転調できなくても、別の調を挟むことで自然に転調させることが出来たりします。
少しひねったやり方ですが覚えておくといいでしょう。
もう一つのポイントはG7→Cmのところです。
ここはどんなコードでもいいというわけではありません。
自然に進行するコードを選ぶ必要があります。
G7→Cmの進行はKey in CmのV7→Imになっています。
強進行ですから極めて自然なコード進行になります。
合うコードと合わないコードがありますので、試行錯誤して色々試してみましょう。
IVM7→Ⅴ7を使った転調
ツーファイブの連続ではなく、IV→Ⅴ7の進行を使った転調を紹介します。
Iの前のコードはツーファイブだけでなくIV→Ⅴ7も使えますよね。
ここでは元の調のツーファイブから新調のIV→Ⅴを入れた転調を紹介します。
具体的なコード進行はDm7→G7→Ab→Bb→Ebです。
Key in C→Key in Ebへの転調になります。
G7→Abの進行は前にも述べたように、非常にスムーズに進むので問題ありません。
AbとBbはKey in Cから見れば♭VIや♭ⅤIIになっています。
♭VIや♭ⅤIIは同主調からの借用和音でよく使われるコードですから、
馴染み深いかもしれませんね。
ディミニッシュ・コードを使った転調
ここからはディミニッシュ・コードを使った転調を紹介します。
ディミニッシュ・コードは非常に奥が深いので、一度にすべてを紹介するのは困難です。
ここではパッシング・ディミニッシュを使った転調のみを紹介します。
パッシング・ディミニッシュとは2つのコードの間を取り持つコードのことです。
C→C#dim→Dmといった進行になります。トライアドでもセブンスコードでも使われます。
ディミニッシュコードに関する記事は以下にありますので読んでみてください。
Key in CからKey in Aに転調させてみましょう。
GとAの間にG#dimを入れてあげることで、転調させることが出来ます。
もう少し理論の解説をします。Key in AのV7はE7です。
このE7とG#dim7は構成が非常に似ているのです。それを確認しましょう。
E7のルート(根音)を省略すればG#dimになります。
この2つのコードは代理関係にあるといっていいのではないでしょうか?
ディミニッシュ・コードを使った転調の具体的なコード進行を紹介します。
C→Em7→C→F→G→G#dim→Aになります。
Key in CからKey in Aへの転調になります。
G#dimの代わりにE7を使うことも出来ます。
その場合、前のコードはG7でなくても転調は可能です。
その他の転調を紹介
最後に、同じコード進行をそのまま半音上または全音上の調に
転調する方法を紹介します。
Key in EmでEm→D→C→Bを繰り返すコード進行です。
ディグリーで表すとIm→♭ⅤII→♭VI→Ⅴになります。
このコード進行をそのまま半音(全音)高めるだけの転調です。
最後のコードがVでなくてもこの転調は使えます。
この転調のコツは、私もまだよく分かっていないので説明は難しいです。
言葉の説明より音を聴いてもらった方が分かると思います。
以下はKey in Emから半音上の調であるKey in Fmへの転調例です。
Em→D→C→Bの後にFm→Eb→Db→Cが続くコード進行です。
Keyは異なりますが、どちらもIm→♭ⅤII→♭VI→Ⅴになっています。
JPOPでは最後のサビを半音または全音高めて
演奏されることは多いですので、この転調は有効です。
全音上の調に転調する例も見ておきましょう。
転調の際には『転調の目的』を意識する必要があります。
ガラッと雰囲気を変えたいのか、自然に転調させたいのか、
あるいは聴衆に転調させることを予期させるのか、そうではないのかということです。
転調させれば良い曲になるということではありません。
目的のない転調は違和感を生み出すだけになってしまいます。
ボーカルの音域にも注意する必要があります。
綺麗に転調できたとしても、新調のメロディーがその歌手が出せる音域を
超えてしまっては意味がありません。
ボーカリストや楽器の音域を考慮しながら、転調させる必要があるのです。
ここで紹介した転調のパターンはごく一部です。
まだまだたくさんあるので自分でいろいろと試してみましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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