『春雷』は2017年にリリースされた米津玄師の通算4枚目のアルバム
「BOOTLEG」に収録されている曲です。今回はこの曲をレビューします。
タイトルは「春の到来を伝える雷」という意味のようですが、
それをどのように音楽で表現するのか楽しみですね。
米津玄師『春雷』
イントロはグロッケンのフレーズから曲が始まります。
このフレーズは後に繰り返し使われることになりますが、その使い方には疑問が残ります。
この点は後述します。2小節後にはシンセがグロッケンのフレーズに重ねられています。
ギターのフレーズはなかなかカッコいいですし、ドラムも音色がいいですね。
キック、クラップ、ハイハットいずれも曲に合った音が使われています。
リズムパターンは普通ですが、選択した音色が曲に合っているので心地よく聴こえます。
(0:19)
Aメロは細かいリズムでやや早口のフレーズになっています。
なかなかカッコよくていいですね。ギターのミュートも上手に曲を彩っています。
8小節演奏して繰り返しのAメロになりますが、ここでは新しい音を加えるのがアレンジの基本です。
しかし、この曲ではそれが上手くいっていません。
グロッケンのフレーズを足しているのですが、これはあまり良くありません。
なぜなら、イントロで聴いたばかりなので新鮮味がないということと、
このフレーズがサビでも使用されているからです。
グロッケンの8分音符のフレーズというのはキラキラしていて印象に残りますが、
頻繁に使うものではありません。
サビでこのフレーズを使うのであれば、Aメロでは違う楽器を加えるべきです。
(1:52)
2回目のAメロですが面白い工夫が施されていますね。
厳密には1回目のAとは異なるフレーズがここで使われています。
1回目のAは早口のフレーズでしたが、ここでは8分音符で
淡々と歌い上げるフレーズに変えています。これは珍しい構成だと思います。
やはり同じフレーズを繰り返すだけになると単調で退屈な曲になりがちですが、
このような工夫を入れることで曲のクオリティーを高められるのです。
8小節後にはブレイクを入れた後に元のAメロに戻ります。
この一連の流れは非常に良いアイディアだと感じました。
【楽曲分析】米津玄師の『アイネクライネ』をレビュー【フルPV】
(0:50)
Bメロに入り、歌のメロディーに工夫が施されています。
16分の後に付点8分が付くメロディーになっています。
上手にAメロとのメロの違いを出しています。
アレンジではシンセのフレーズが入ってきて曲を彩っています。
これはいいのですが、途中のパーカッションは微妙ですね。
カウベルを入れているのですが、あまり曲との相性が良くないように感じます。
グロッケンやカウベルといった生の打楽器を使う一方で、
シンセを入れているのですが、組み合わせがいまいちですね。
悪くはありませんが、パッとしない感じです。
サビに入る直前のSEは面白いことですね。あまり聴いたことがありません。
(1:06)
サビのメロディーは及第点です。やや盛り上がりに欠けますね。
アレンジではギターのミュートのフレーズが加わっています。
さらに、イントロで使われたグロッケンのフレーズが加わり曲を彩りますが、
やはりここで使うのであれば、Aメロでは控えるべきだったでしょう。
「また、同じグロッケンのフレーズが出てきた……。」という印象をリスナーに与えてしまいますからね。
サビ後にはイントロと同じフレーズが使われています。
コーラスを入れて変化を与えていますね。これは非常に良いです。
(3:09)
間奏ではギターとベースとシンセの組み合わせが非常にカッコイイですね。
ここではこれまでの展開とは少し違った雰囲気を出すのがいいのですが、
上手にアレンジされていると思います。
ハイハットを抜いて抑えぎみなアレンジにしているのも基本とはいえ、ポイントは高いです。
しかし、その後のDメロの出来は明らかに悪いです。
メロディーのクオリティーが低いですね。何を歌っているのかよく分かりません。
アレンジの効果でなかなか良い雰囲気は作られていますが、
肝心のメロディーがこれでは曲のクオリティーは高まりません。
最後のサビに入る前にブレイクが上手に使われていますね。
このアーティストの曲はブレイクの使い方に何がある曲が多いのですが、
この曲では上手に使われています。
(3:56)
特にアレンジに変化はありませんね。
グロッケンのフレーズはここだけに使うのでも良かったですね。
やはり最後のサビというのは曲の中で一番盛り上げたいところですから、
前のサビと比較して何も変化がないというのは寂しいです。アウトロも同様に変化はないようですね。
米津玄師『春雷』の総評
凡庸な曲でしょうかね。
2回目のAメロのアレンジはなかなか興味深かったです。
Dメロの出来は残念ですね。他の曲でも上手くいっていないことが多いです。
グロッケンの使い方は、もう少ししっかりと考えたほうがいいでしょう。
曲の全体像をイメージしつつ、どこでそのフレーズを入れるのが最適なのかを適切に判断できるかが、
クオリティが高い曲を作る上で大切なことなのです。
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