米津玄師『馬と鹿』レビュー|悪くないけどネタ切れ感はある

今回は米津玄師の『馬と鹿』のレビューを行います。

『馬と鹿』は2019年8月12日に先行配信され、
9月11日にシングルとしてリリースが予定されている米津玄師の10枚目の作品ですね。
この曲はTBS日曜劇場『ノーサイド・ゲーム』の主題歌として起用されています。

ドラマの主題歌となると、そのドラマの世界観と合っているかが、
曲を作る上で大切な要素になりますが、 私のレビューでは純粋に曲だけを聴いて評価をして行きます。

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米津玄師『馬と鹿』

作詞・作曲・編曲:米津玄師

イントロはありません。lemonの時と同様にブレスから始まっています。

Aメロはなかなか綺麗ですね。ギターのミュートだけというシンプルなアレンジですが、
最初のAメロですので十分です。余計な音を入れてしまうと逆効果になりかねません。

途中にSEのような音が少し加わっています。良い味を出しています。

(0:24)
Bメロもまずまず良い出来です。
後半の方は、サビに向かって高揚感が高められていて良いです。

アレンジはハイハットのフレーズが加わり、途中からキックも加えています。
このように徐々に音数を増やしていくのは、良いアレンジです。

サビに入る前にはブレイクが使われています。
米津玄師さんの曲はブレイクが使われる頻度が非常に高いですが、使い方はあまり上手ではありません。
これは他の記事で書いていますので、今回の記事では深く触れません。

(0:47)
サビに入って、A、Bメロの落ち着いた雰囲気から一気に派手に盛り上げることに成功しています。

特にストリングスのフレーズが華やかで美しいです。
特に合いの手(オブリガード)の短い音符を使ったフレーズが綺麗です。上手なアレンジですね。
ここのアレンジはおそらく坂東祐大さんが担当されたのでしょう。
専門の知識とセンスがなければできませんからね。

一方、歌のメロディーはいまいちです。印象に残りづらく、あまり盛り上がりません。

キックとクラップの音は曲に合っています。聴いていて心地よいです。
リズム隊の音が曲に合っていると曲全体が引き締まります。
サビ後にもやはりブレイクが使われています。

(1:25)
最初の間奏はギターのリフが中心になっています。まずまず印象に残るフレーズです。
キックとクラップの音が相変わらず良いですね。

(1:36)
最初の間奏が終えてAメロに戻るのですが、ここのアレンジは良いです。

キックのパターンを変えているので、Aメロに戻ってから少しアレンジが緩やかになっています。
強く印象に残るキックは、ずっと鳴り続けているとうるさく感じ、
耳が疲れるので音数を減らしたりどこかで完全に抜いたりするのがアレンジの基本です。

(1:56)
空間系エフェクトが深めにかかった打楽器を入れて、Bメロに移行します。

ここでキックを完全に抜いていますね。良い判断だと思います。
変わりにスネアが存在感を出して、曲を彩っています。
弦楽器も加わっていますが、フレーズが変ですね。

(2:20)
2回目のサビがここから始まります。
ここでアレンジに変化を与える曲は、さほど多くはありません。
しかし、この曲ではストリングスのフレーズを変えて、1回目のサビより盛り上げることに成功しています。

(2:52)
ここで間奏に入りますが、最初の間奏とほぼ同じですね。悪くはありません。

(3:02)
ここからDメロが始まります。Dメロは今までの流れを壊さず、新しい世界を見せる必要があります。
この曲のDメロはまあまあですね。歌のメロディーはさほど印象に残るものではありません。

真に優れた曲は、サビのメロディーも美しいのですが
Dメロのメロディーもサビに負けないくらい美しいのです。
この曲は、残念ながらその領域までは達していません。

最後のサビに戻る前のアレンジは面白いですね。
ストリングスを中心に、他のパートとキメフレーズで印象付けてサビに進みます。
非常に参考になるアレンジです。
ここでもブレイクが使われていますが、少ししつこい感じがします。

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最後のサビは前のサビと同じではなく、変化を与えるのが基本です。

この曲では、歌のメロディーを少し変えて盛り上げることに成功していますね。
アレンジ面では目立った変化はありませんでしたが、十分です。

アウトロの出来は非常に良いですね。ストリングスのフレーズが迫り来る感じで、
危機感、スリルを感じるようなフレーズで曲を締めています。
最後はスッと音が消える感じが良いです。

米津玄師『馬と鹿』の総評

A、Bメロまでの流れがいいのですが、サビのメロディーがいまいちですね。
作曲をする上で一番難しいところではありますが。
音楽はメロディー(旋律)の持つ力が非常に大きいので、
メロディーのクオリティが高くないと楽曲全体の評価につながりません。

注目されているが故に多作になるのでしょうが、ネタ切れ感は否めませんでした。

ストリングスのアレンジは見事でしたね。
短い音符を用いたフレーズは独特の魅力があり、カッコよかったです。
これは参考にしたいと思いました。

坂東祐大さんの存在が大きいですね。
オーケストレーションが上手くいっていなければ、
もっと評価は低かったですからね。

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