セカンダリードミナントを使ったコード進行とスケールの正しい選び方

今回は一時的な転調をもたらし、泣けたり切ない響きがするセカンダリードミナントを解説します。
解決するコードをIあるいはImと解釈して、その前にV7を置くというコード進行です。

初心者の方がコード理論を学ぼうとしたとき、
最初に覚えることになるのはダイアトニックコードだと思います。

しかし、次第に物足りなさを感じるようになり、
転調を絡めたコード進行を学ぶようになると思います。

そのひとつがセカンダリードミナントです。

セカンダリードミナントを上手に使えるようになると、色彩感豊かな曲が作れるようになります。
今回の記事ではセカンダリードミナントが使われた時の、スケールの選び方も解説しています。

ぜひ、最後まで読んでみてください。

セカンダリードミナントを使って転調させる

転調というのは曲の中で他の調に変わることをいいます。

転調させることによってそれまでとは違った世界観を表現することができるのです。
上手に使えば切なさや怪しさ、泣ける雰囲気を作り出せます。

セカンダリードミナントのように一時的に他の調に変えることもあれば
その先しばらく(ずっと)その調のまま演奏されることもあります。

今回の記事ではセカンダリードミナントを使い、
一時的に転調するコード理論を解説していきます。
さっそくセカンダリードミナントを用いたコード進行の具体例を聴いてみましょう。

上の譜面はセカンダリドミナントを使ったシンプルなコード進行です。

Aが使われているところだけ少し雰囲気が変わっていますよね?
これがセカンダリードミナントを使って一時的に転調させた効果です。

Key in Cから見たDmはIImになりますが、これをKey in DmのImと解釈するのです。
そして、ドミナントモーションで進行させるために、Dmの前にKey in DmのⅤであるAを使うのです。
AのところではA7を使うことも可能です。

セカンダリードミナントのような一時的な転調に関しては、元の調から見た進行と、
転調後の調から見た進行の両方の視点から考えることが大切です。

例えばKey in CでC - A - Dm – G7という進行はI - VI – IIm - Ⅴ7という進行になっていますが、
Key in Dmから見たA – DmはⅤ - Imという進行になっているのです。
この時のAまたはA7のことをセカンダリードミナントと呼びます。

以下の譜面はセカンダリードミナントの一覧です。

Key in Cだけのセカンダリードミナントだけを覚えても
意味がありませんのでディグリーで覚えるのがいいでしょう。

ドミナントモーションになっているので当然、強進行になっています。

※Ⅴ7 – Ⅰはセカンダリードミナントとは呼びません。

便宜上セブンスコードで記されていますが実際には、セカンダリードミナントも解決するコードも
3つの音で構成されたトライアドが使われることもあります。

あわせて読みたい
小室進行(6451)の魅力を楽譜と音源を使って存分に語る

 

セカンダリードミナントのコードの連結

セカンダリードミナントを使った進行も、ドミナントモーションの時と同じ連結にすると自然な響きになります。
コードの連結というのはそのコードのコードトーン(構成音)から
次のコードのコードトーンへどのように連結させるかということです。

ドミナントセブンスコードのM3(導音)は短2度上行して主音へ進ませ、
m7は2度下行させるということです。

ただし後続のコードがセブンスコードの場合は導音を増1度下行させます。

これらは普通のドミナントモーションと同じです。楽譜で確認しましょう。

セカンダリードミナントを使った場合も同じように連結させるのがいいでしょう。

コードの連結は絶対に守らなければいけないというものではありません。
しかし、自然の響きを求めているのであればしっかり学ぶことをおススメします。

セカンダリードミナントも ツーファイブ(IIm7 – Ⅴ7)に分けることが出来ます。
このときに IIm7 ではなく IIm7♭5が使われることがあります。

元の調から見たコード進行と転調先のコード進行の両方を記しておきました。

E - A – Dの進行は五度圏の時計回りになっていることに注目してください。
五度圏を暗記すれば全ての調(短調を含む)のIIm7 - Ⅴ7 – Iを完璧に覚えているのです。

セカンダリ―ドミナントを使用したコード進行

セカンダリードミナントを使ったコード進行をいくつか紹介しましょう。これらを参考にしながら自分でも使ってみてください。

 

セカンダリードミナントをツーファイブに分けたコード進行です。

あわせて読みたい
【コード進行のまとめ】初心者が覚えるべき8つのパターンを紹介!!

 

セカンダリードミナントの一種であるダブルドミナント

ダブルドミナントとは II7のことでドッベルドミナントとも呼ばれます。
セカンダリードミナントの一種と言っていいでしょう。

II7 – V7という進行で使われるの一般的です。

ダブルドミナントという言葉には罠があります。
それはファンクション、つまり機能に誤解を与えてしまう可能性があります。
名前を聞くとドミナントが連続しているかのように錯覚しますが、
元の調から見た場合と転調先の調から見た場合を分けて考える必要があります。

II7は元の調から見た場合はサブドミナントで、
転調後のV度調から見た場合は、機能はドミナントになるのです。
この辺りはかなり複雑でややこしいです。
分からなくても大きな問題はありませんのであまり気しなくてもいいです。

ダブルドミナントを使ったコード進行を紹介

ここからはダブルドミナントを使ったコード進行を一つ紹介します。早速聴いてみましょう。

最後にGではなくG7sus4の代理コードを入れてみました。
途中にサブドミナントマイナーコード(Fm)を入れて進行を工夫しました。

あわせて読みたい
サブドミナントマイナーコードを使いこなしライバルに差をつけよう!!【作曲&コード進行】

 

ダブルドミナントの楽譜の表記について

ダブルドミナントの楽譜の表記はしっかりと覚えておきましょう。

特に短調のダブルドミナントは少しややこしいですので、慣れるまで苦労するかもしれません。

長調のII7 (ダブルドミナント)の場合は3度の音のみに臨時記号を付けていましたが、
短調のII7では5度の音にも臨時記号が付きます。
調によっては3度と5度に違う臨時記号が付けられることもあるので注意してください。

セカンダリードミナントをはじめ、一時的に転調させるコードはたくさん使えば
いい曲になるというわけではありません。
多用してしまうとくどくなってクオリティを下げてしまう恐れがあります。
ですから、要所で使うのが上手な使い方と言えます。

様々な経験を積むことによって、どのタイミングでコードを入れればいいのか徐々に分かってきます。

セカンダリードミナントのスケールの基礎知識

私はポピュラー音楽向けの理論書を読む機会が多いのですが、
スケールに関して詳しく書かれているものに出会うことはほとんどありません。
確かに演奏や作曲のときには、スケールの知識がなくても感性に頼ればなんとか乗り切れるかもしれません。

ただし、編曲を行うようになるとなかなかそうはいきません。

特に複雑な転調が絡んだコード進行の際には、
スケールの知識がないとなかなか良いフレーズは作れないのではないでしょうか?

コードスケールの基礎知識がない方は以下の記事を読んでみてください。

あわせて読みたい
コードスケールとは何か?コード進行に合うスケールの見つけ方と使い方

 

コードに使えるスケールというのは、一つではなく複数ある場合もあります。

そのスケールで思いどおりのフレーズが作れなければ、
別のスケールでフレーズを作ることが出来るのです。

上の譜面はダイアトニックコードだけで作られたコード進行と、そこで使われるスケールの一覧です。

・CにはCアイオニアン
・AmにはAエオリアン
・Dm7にはDドリアン
・G7にはGミクソリディアン
がそれぞれ使われています。

勘のいい人なら気づいたかもしれませんが、
全てCメジャースケールの順番を並べ替えただけのスケールです。

「それならCメジャースケールでフレーズを作ればいいのでは?」

こういう反論をされる方がいると思います。
確かにこのコード進行ならばそのやり方でも通用するでしょう。
少なくてもポピュラー音楽に関しては転調がなければスケールの知識はさほど役には立ちません。

しかし、現代のポップスで転調の要素が全くない曲は皆無といえます。
よって、スケールの知識はやはり必須なのです。

セカンダリードミナントのスケールの考え方

下の譜面はセカンダリードミナントを使った代表的な進行です。

前のコード進行と比べるとAmをA7に変えただけと分かります。

このA7 - Dmの進行がKey in CではVI7 - IIm7という進行になっており、
Key in Dm から見た場合、Ⅴ7 - Im7という進行になっています。

このA7のところでCメジャースケールでフレーズを作ってしまうと、
A7のM3のド#とスケールのドがぶつかり、響きが濁る可能性があります。

※M3とはメジャーサードと読み、日本語だと長3度のことを表します。

スケールの考え方はいくつかありますが

「まずコードトーンを並べて、その間を何の音で埋めるのか」

これがオススメです。

セカンダリードミナントにおススメできる2つのスケール

「Cメジャースケールの音で埋めればいいのでは?」

このように考えた人もいると思います。

実はこの考え方はシンプルでありながら、なかなか鋭いです。

A7のコードトーンであるラ・ド#・ミ・ソと並べておき、その間を
シ・レ・ファで埋めるとAミクリディアン♭6というスケールが出来ます。

このAミクリディアン♭6はこの場面で最も多く使われるスケールと言っていいでしょう。

ただし、ここで使えるスケールは他にもあるのです。これがスケールの面白いところで、
状況によってスケールを使い分けることが出来るのです。

具体的には

・元の調は何なのか?
・前後のコードとそこで使われるスケールは何か?
・曲調やジャンルを考慮する
・作曲家(編曲家)の好みや意図は何か?

といったところです。

あまり難しく考えなくても

「そのスケールを使って色々とフレーズを作ってみて、一番しっくり来たものを選ぶ」

というやり方で構いません。

先ほどのA7のところで、Aミクリディアン♭6以外で使えるものとして有力なのはAHmp5↓スケールです。

Aミクリディアン♭6との違いは2度の音だけです。

Hmp5↓スケールは

『ハーモニック・マイナー・パーフェクト・フィフス・ビロウ・スケール』

という長々として覚えにくい名前です。

長いので私はHmp5↓スケールと略しています。読むときにも長くて言いづらくて嫌ですよね。

ある音楽系のブログではこのスケールの読み方について
「長いからビロウでいい」と書かれていて、私もそれに賛同しました 😀

音楽用語に限らず、難しく覚えづらい名前というのは学習するモチベーションを下げるので、
短い言葉に言いかえるのがいいでしょう。

Hmp5↓の構成の説明を聞くとこれもやや難しく感じるかもしれません。

「完全5度下の音を主音としたハーモニック・マイナー・スケールを完全5度から並び替えたスケール」

という構成になります。

AHmp5↓ならばAの完全5度下の音、つまりD(レ)を主音とした
ハーモニック・マイナー・スケールを並べておき、
その完全5度であるA(ラ)から並び替えたスケールということになります。

スケールの覚え方に関してはもっと分かりやすいものがありますので、
この覚え方でなくてもいいです。

ところでハーモニック・マイナー・スケール(和声的短音階)の特徴を覚えていますか?

義務教育の音楽の授業で習ったかと思いますが、ここで復習しましょう。

短調には3つのスケールがあります。

ナチュラル・マイナー・スケールではV7の導音が存在しないので7番目の音を半音高めて作り出します。
これがハーモニック・マイナー・スケールです。

7番目の音を半音高めた結果、6番目と7番目のインターバルが増2度になり、
旋律を作るうえで不自然な響きになります。

そこで6番目の音を半音高めます。
これがメロディック・マイナー・スケールです。

今説明したように、ハーモニック・マイナー・スケールでは6番目と7番目のインターバルが増2度で、
旋律を作るうえで不自然な響きになりやすいです。
あえてその不自然さを狙うならいいのですが、そういう意図がなければ気を付けなければいけません。

Hmp5↓もハーモニック・マイナー・スケールの5番目から並び替えたスケールですから
増2度のインターバルが存在します
Hmp5↓の場合は2番目と3番目のインターバルが増2度です。

ですから、このスケールを使うときにはそこを留意してください。

私が各スケールを使った曲を用意しましたので聴いてみましょう。
少しの違いがサウンドに大きな影響を与えることが分かるはずです。

まずはA7にAビロウスケールを使った曲から紹介します。
増2度のインターバルを避けて、メロディーを作るのが大切です。


つづいて、A7にAミクソリディアンb6を使ったフレーズを紹介します。
前の曲との違いを感じましょう。


作曲するときサブドミナントマイナーコードには何のスケールを使えばいいの?

セカンダリードミナントの最後のひとこと

今回はセカンダリードミナントのコード進行とスケールについて解説を行いました。
一度で理解するのは難しいかもしれませんので、繰り返し読んで学んでみてください。

今までスケールのことを学んでこなかった人も、
今日の解説で少しは理解が深まったのでないでしょうか?

セカンダリードミナント以外にも部分転調するコードはたくさんあります。

サブドミナントマイナーや裏コード、ドッペルドミナントなどいくつかありますよね。
他にもサスフォーコードや分数コード、ディミニッシュコードなど・・・。

このようなコードが出てきたときのコード進行パターンや
何のスケールが使えるかをキチンと学ぶ必要があります。

知識がなくても感性に頼りながらフレーズは作れるかもしれませんが、
感性に頼るやり方ではいつか必ず壁にぶつかります。
そもそも理論を学ぶことと感性を大切にすることは矛盾しません。
車の両輪のように、両方が機能して初めて前に進みだすのです。

あわせて読みたい
今までに投稿したコード進行の記事はこちらから読めます。

 

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