コード理論を解説している理論書は多いですが
美しい響きを作り出すノウハウを紹介しているものは少ないです。
単にコードネームやディグリーだけが掲載されていて
それを丸暗記しただけではコード理論を学んだとはいえません。
コード進行で美しい響きを作り出すのには『トップノート』が鍵を握っているのです。
DTMが主流になり誰でも手軽に作曲できる時代になりましたが
一方、楽譜を読んだり書いたりすることの重要さが失われてしまいました。
コード進行に関してもコードネームやディグリーだけで学ぶのでは不十分で
楽譜を用いて学習する必要があるのです。
美しいコード進行を作るにはトップノートの動きが大切
トップノートとはそのコードの中で一番高い音のことです。
人間の耳にはそのコードの一番高い音と一番低い音が
聞き取りやすいという特徴があります。
一番高い音と一番低い音の2つのことを「外声」といい
その2つにはさまれた音を「内声」と呼びます。
世に出回っているコード進行の理論書ではコードネームやディグリーだけが
記載されていて、トップノートの重要さはほとんど語られていません。
※ディグリーネームとはI - IV - I - Ⅴ7という記号のことです。
私も作曲を行っているときに、コード進行の響きに納得いかず
また、その原因も分からず苦労した経験があります。
理論として間違った進行ではないのですが
思い通りの響きを作れなかったのです。
そんなときに『和声学』を学び始めて、そこからコードの連結や
トップノートの動きに注目するようになりました。
今回は私が学んだその知識を同じ悩みを抱えたあなたにも紹介したいと思います。
楽譜を使って美しいコード進行を学ぶ
ピアノでコードを弾くときには基本的に左手でルート音を弾き右手で和音を弾くことになります。
このときの右手のコードの構成が重要です。
例えばCというコードを弾くときに
・ドミソと押さえる(基本形)
・ミソドと押さえる(第一転回形)
・ソドミと押さえる(第二転回形)
の3種類があります。
上の図の左を見てください。これらは全てCというコードです。
左手でルート音のドを弾いていますから、右手のコードの形に関わらずこのコードはCになります。
対して上の図の右は右手で押さえるコードは同じですが、ベース音(最低音)が異なるためコードネームにも違いが出ます。
ちなみに左が基本形、真ん中は第1転回形、右は第2転回形になっています
同じCでも様々な種類がありますし。響きも異なるのです。
トップノートを意識した美しいコード進行
ひとつのコードを鳴らすだけでも右手の構成は重要ですが
コード進行となるともっと重要性が増します。
コードが進行すると一番目立つトップノートも動くからです。
トップノートで美しい流れが作れるようになると、コード進行の響きも断然美しくなります。
そうするとリスナーに対しても好印象を与えられます。
それでは実際にトップのコートを意識しなかったコード進行と意識したコード進行を聴き比べてみましょう。
まずはIIm7 - Ⅴ7 - I(ツーファイブワン)の進行から聴いてみましょう。
曲やフレーズが終わるときによく出てくるコードですが、トップノートによって終止感が異なるので注意が必要です。
この3種のうちどれが正解とかそういう問題ではありません。
どれも立派なコード進行なので自分の楽曲に合わせて使い分ければいいのです。
ただし、終止感の強さという意味では一番最後の進行が優れています。
その理由は最後のIのトップノートが主音になっているからです。
これは非常に大切なことなので必ず覚えてください。
続いては
C – Fm – C – G7 – E7 – Am7 – Dm7 – G7
I - IVm - I - Ⅴ7 - III7 - VI m7 - IIm7 - Ⅴ7
というコード進行で試してみたいと思います。
まずはトップノートを意識しなかったパターンから聴いてみましょう。
どうですか?
この進行も理論的には正しいですし、特に変な響きではありません。でも美しい響きかといわれるとそうでもないですよね。その楽曲において最も大切なのはメロディーの美しさです。しかし、だからといって伴奏のフレーズをないがしろにしてはいけません。
では次にトップノートを意識した進行を聴いてみましょう。
先ほどの進行よりはるかに美しいですよね。
このように、コードネームだけを見ると全く同じコード進行ですが、
トップノートの動きによって響きが大きく異なるのです。
理論書を読んで、コードネームやディグリーだけを丸暗記してはいけません。
DTMのピアノロールでピアノ伴奏を学ぶのも絶対にやめてください。
キチンと楽譜を見てトップノートの動きを意識するようにしてみてください。
必ずあなたの楽曲のクオリティは上がりますよ。
トップノートを意識したコード進行の罠
トップノートを意識することの重要さは理解していただいたと思います。
しかし、ここでトップノートを意識することのデメリットがあることも説明したいと思います。
トップノートは保留したり、ド→シ→ド→シのようにジグザクに動くと色彩感が薄くなり響きが淡白になります
しかし、あえてその効果を狙ったアレンジもあります。
シンセパッドがその代表です。
シンセパッドは空間を埋めるために使われることが多く、存在感を薄くして脇役として活躍するのです。
そのため、トップノートをあまり美しくしてしまうと存在感で出てしまい、
あまりいい効果が出なくなることがあります。
それからポップスのピアノ伴奏の場合にも注意が必要です。
ポップスでは歌がメインですから、歌のメロディをリスナーに聴かせたいのです。
そのときに、ピアノの伴奏があまりに華やかだと
歌よりもピアノ伴奏のほうが目立ってしまうことも考えられます。
ですからあえて少し抑え気味の演奏をすることがあります。
また、クールでストイックな雰囲気を醸し出すのにも使われます。
R&Bを始めとするクラブミュージックがその典型といっていいでしょう。
こういう音楽では少ないコードで進行を作りクールな世界観を作り出すのです。
コードを次々と展開させ、トップノートを上手に動かすと
色彩感豊かで華やかな進行が作り出せますが、それを嫌う音楽もあるということです。
最後のひとこと
同じコード進行でも、トップノートの動かし方を変えると響きが
まったく異なるということが分かったいただけたと思います。
コード進行というのはどんな音楽でも重要で奥が深くて魅力的な存在です。
だからこそ、ただコードネームを丸暗記するのではなく
トップノートの動きやコードトーンの連結について学ぶ必要があるのです。
「理論的に間違っていないからこれでいい」
「耳で聴いて変じゃないからそれでいい」
このようないい加減な姿勢は成長を妨げるだけです。
あなたはこれから作曲を行う際にトップノートを意識してみてください。
今まで作った作品のコード進行を見直すのもいいと思います。
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