コード進行パターンを増やしていくためには、代理コードのことを学ぶのは必須です。
同じコード進行では曲もワンパターンになってしまいますので、
作曲する側も聴く側も飽きてしまいます。
ところで代理コードとはいったいどのようなものなのでしょうか?
同じ音を多く含んでいると代理関係になると言われていますが、
残念ながらそれは事実ではありません。
そこで今回は、コード進行の色彩感を豊かにしてくれる
代理コードの探し方や使い方を楽譜と音を使って解説します。
代理コードとは何か?
代理コードとは何かを一言でいうことは難しいです。
コード理論の基礎を復習し、その後に代理コードの解説を行います。
その方が理解が深まります。
ますは、スリーコード(主要三和音)を確認しましょう。
IとIVとⅤの3つのコードのことですね。
コードの機能には、トニック、サブドミナント、ドミナントがあります。
トニックは安定した響きがします。
ドミナントは不安定な響きがして、次に安定したトニックへ進みたがります。
サブドミナントは安定とも不安定ともいえない響きがします。
スリーコードの機能を見てみましょう。
・Iはトニック
・IVはサブドミナント
・Ⅴはドミナント
になっています。
このスリーコードだけでも様々なコード進行が作れます。
いくつかコード進行の例を作ってみました。
① I→IV→Ⅴ7→I ② IV→Ⅴ→I→I ③ I→Ⅴ→I→IV ④ IV→I→Ⅴ→I |
ポピュラー音楽の世界では、Ⅴ→IVという進行も使われます。
これらのコード進行でも曲を作ることは可能ですが、
これだけだと、同じような雰囲気の曲ばかりになってしまいます。
そこで代理コードを使い、新たなコード進行パターンを作るのです。
トニックの代わりにはトニックを、サブドミナントの代わりにはサブドミナントを
代理コードとして使用することができるのです。
Iの代わりにVImを、IVの代わりにIImを代理コードとして使うことができるのです。
元のコードも代理コードも、トライアドではなくセブンスコードを使用することができます。
VImの代わりにVIm7を使うことができますし、
IV の代わりにIVM7を使うことができるということです。
ダイアトニックコードの機能を確認しましょう。
・T (トニック)はIとVIm
・SD (サブドミナント)はIVとIIm
・D (ドミナント)はV7
IIImをトニックという人がいますが、このコードは少し特殊なのでトニックと断定することは出来ません。
IIImとⅤIIm♭5は後で解説します。
先ほども述べたように、トライアドではなくセブンスコードも使用することができます。
Iの代理コードとして使えるコードには、同じ根音を持つIM7やIm、Im7やI6などもあります。
代理コードを使ったコード進行パターン
代理コードを覚えることで色彩感豊かなコード進行が作れるようになります。
先ほどのスリーコードを使ったコード進行の中に、代理コードを入れてみます。
I→IV→Ⅴ→IのIVの代わりに、同じサブドミナントである IIm7を代理コードとして使うことができます。
I→ IIm7→Ⅴ7→Iというコード進行になります。
Iの代わりに VImを代理コードとして使えるので、VIm→IV→Ⅴ7→Iというコード進行になります。
Key in Cで解説しましょう。
C→F→G→C(I→IV→Ⅴ→I)のFの代理コードとしてDm7を使います。
すると、C→Dm7→G→Cというコード進行になります。
C→F→G→C(I→IV→Ⅴ→I)の最初のCの代理コードとしてAmを使うと、
Am→F→G→Cというコード進行になります。
コード進行の響きを大きく変えることなく、別のサウンドを生み出しています。
代理コードを上手に使いこなせるようになると、音楽性の幅も広がります。
共通音が多いと代理コードになるのか?
共通音が多いと代理関係になるといわれていますが、そうともいえない側面がります。
Am7の構成音は、ラ・ド・ミ・ソになっていて、根音のドを省略すると、
Cというコードになります。共通している構成音が多いですね。
「だからCとAm7は代理関係」という主張をされる人がいます。
たしかに、Am7とCを比較すればそう言えなくもないのですが、
他のコードもしっかり調べてみる必要があります。
FM7の構成音はファ・ラ・ド・ミです。根音のファを省略すると、
Amになります。先ほどの理屈だとFM7とAmは代理関係ということになります。
しかし、そうではありませんよね?
FM7はサブドミナントでAmはトニックです。IVM7とVImは代理関係ではありません。
しっかりと調べてみると、このような矛盾が生じていることに気づきます。
IIIm7はトニックだと教えられることが多いのですが、そうとも言えません。
CM7の根音を省略すれば、Emになるので同じトニックだといえそうですが、
Em7とAmを比較してみましょう。共通音は1つしかありません。
和声学ではIIIm7の後のコードがVImの場合は、
トニックではなく、ドミナントになると考えられています。
Em7→Amというコード進行はKey in Amから見ると
Vm7→Imになっているのです。ドミナントからトニックになっていますね。
Key in Cmで見た場合は、Gm7→Cmという進行ですので、
この2つのコードが代理であるという考えは違和感があります。
IIIm7は基本はトニックと考えていいと思いますが、
後続のコードがVImの場合はドミナントであるという考えをおすすめします。
このように、代理コードの定義は曖昧で分かりづらいのです。
共通音が多ければ代理コードになる、という考えは正しくありません。
サスフォー(sus4)の代理コードの一覧
サスフォーコードには代理コードが豊富にあるので、必ず習得しましょう。
サスフォー(sus4)コードは主にドミナントセブンスコードで使われます。
V7のM3(長3度)の音を半音上げ、P4(完全4度)にするのです。
G7のコードトーンはソ・シ・レ・ファですので、M3のシの音をドに変えるのです。
ソ・ド・レ・ファで構成されたコードがG7sus4(V7sus4)になります。
7度の音を省略しても大丈夫ですので、ソ・ド・レで構成されたGsus4(Vsus4)もよく使われます。
サスフォーコードの代理コードとして最も有名なのが、IIm7 on Vです。
Dm7 on Gというコードになります。
他にもあるのですが、まずあまり教えられることのないコードから紹介します。
そのコードとはI on Vです。Key in Cの場合はC on Gになります。
C on Gの構成音はソ・ド・ミになっています。
Gsus4の構成音はソ・ド・レですので、似たような構成になっています。
C on Gをディグリーで表すと、I on Ⅴになります。
Iの第2転回形はトニックではなく、ドミナントになります。
これもあまり教えられていませんね。
V7sus4の代理コードは豊富ですが、どこまでを代理コードとして認めるかは非常に難しいです。
ここでは使用されることが比較的多いコードを紹介します。
IIm7 on VやIV on Vは使いやすいのではないでしょうか?
ハーフディミニッシュはV7の代理コードなのか?
ⅤIIm♭5はハーフディミニッシュとも呼ばれます。
このコードをV7の代理であるという考えは出来るのでしょうか。
V7とⅤIIm♭5は構成が非常に似ています。
V7の根音を省略したのがⅤIIm♭5になっていますし、
V9の根音を省略すれば、ⅤIIm7♭5になります。
G7の根音であるソを省略すれば、Bmb5になるということです。
和声学ではV7の根音省略形としてⅤIIm♭5が使われることがあります。
共通音が多ければ代理コードになるわけではないので、
ハーフディミニッシュとドミナントセブンスコードが代理関係かは微妙です。
もし、ハーフディミニッシュをドミナントセブンスコードの代理コードとして
使用する場合は、コードの連結に気を付けましょう。
G7→Cの進行の時、シはドへ進み、ファはミに進みたがる性質がありますので、
Bmb5→Cの進行でも同じように進ませるのがいいです。
もちろん、必ず守らなければいけないというものではありません。
マイナーキー(短調)の代理コードについて
ここまで、代理コードについて長調で解説してきました。
それでは短調ではどうなるのでしょうか?
実は難しく考える必要はないのです。
長調も短調もコードの機能はあまり変わらないのです。
つまり、Imと♭VIはトニック。IVmとIIm♭5はサブドミナントです。
♭IIIも同様に基本はトニックで、後続のコードが♭VIの場合は、ドミナントでいいと思います。
♭ⅤIIだけは何とも言えません。導音が含まれていないので、ドミナントと言い切れません。
サブドミナントという解釈が普通でしょうか?
今回は代理コードについて解説しました。
まだまだ紹介しきれないくらい奥が深いです。
代理コードを上手に使うとコード進行パターンが増え、様々な音楽を作れるようになります。
一方、代理コードの定義は曖昧ですので、はっきりしない部分もあります。
代理コードの定義に多くの時間を費やすべきではありません。
それは学者に任せておけばいいのです。
作曲家は細かい理論の議論をするよりも、人々の心を感動させる名曲を作ることに力を注ぐべきです。
今回学んだ知識を生かして、優れた曲を作ってみましょう。
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